お知らせ
吉形医師のエクオール含有食品を用いた研究論文が、医学専門誌に掲載されました
当クリニック婦人科 吉形玲美医師らの研究グループ*による、エクオール含有食品での各種生活習慣病リスク改善に関する研究が、米国の医学専門誌『Journal of Alternative and Complementary Medicine』オンライン版(2018年5月3日付)に掲載されました。
―「エクオール+ラクトビオン酸」の更年期症状改善効果に注目―
大豆イソフラボンが女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることは、以前からよく知られていましたが、近年、その効果の源となっているのは大豆イソフラボンから腸内細菌の力で代謝される「エクオール」という成分であることがわかっています。
しかし、エクオールを産生できる腸内環境を持つのは、日本人女性の全世代を通じて約30%にとどまっており、この「エクオール」という成分を直接体内に摂取することによる更年期症状の改善効果については以前から注目が高まっていました。
今回の研究は、更年期症状を訴える女性105名を対象に、1年以上サプリメントを摂取した場合の更年期障害改善状況に加え、生活習慣病リスク改善について、動脈硬化リスクと骨粗鬆症リスクを中心に検討を行い、さらに長期摂取における安全性についても検証を行っています。
【研究論文の主なポイント】
- ■更年期症状について
- エクオール含有食品の摂取にて更年期症状改善率は1年を通じて上昇が認められ、エクオール産生能の有無による効果の差はなく、ホルモン補充療法を組み合わせた場合と同等の更年期症状改善効果を確認。
- ■生活習慣病について
- ・動脈硬化(baPWV)については摂取わずか3ヵ月で有意な改善を認めた。
- ・摂取前に動脈硬化および骨粗鬆症リスクが高いほど改善を認めた。
(改善項目;baPWV,中性脂肪、尿中NTX(破骨マーカー)、副甲状腺ホルモン) - ■副作用について
- 摂取1年までの観察において子宮筋腫の増大は認めず不正性器出血、子宮内膜肥厚も認められなかった。子宮頸部細胞診、乳腺検査 (マンモグラフィー・乳腺エコー)において特記すべき変化は認めなかった。
更年期症状への効果として、エクオール含有食品摂取による更年期症状改善度は、1か月後43%、3か月後61%、12カ月後86%、と継時的に上昇しており、ホルモン補充療法を併用していなくても同様の経過が認められました。
この結果は、エクオールを産生できる腸内環境を持つか否かに関わらず同等にみられました。つまり、エクオール含有食品を長期間摂取することで、汗、ほてり、イライラ、不安感、肩こり、腰痛、頭痛、肌の乾燥など、様々な更年期症状を効果的に軽減できることを示しています。
生活習慣病への影響については、血圧、動脈硬化指数、コレステロール、中性脂肪、血糖値、骨代謝マーカー等を測定し、比較・検討を行っています。その結果、特に注目すべき影響として、動脈硬化指数(baPWV検査:脈波伝播速度検査)において、わずか3カ月で有意な改善効果(血液のしなやかさに関する改善)が認められました。
また、各リスクの強さ別にみていくと動脈硬化リスクが高いほど、また骨粗鬆症リスクが高いほど改善効果が強いという結果も示されています。
女性ホルモン量の減少による様々な体調の変化、更年期症状への治療としては、現在、ホルモン補充療法が一般的ですが、子宮筋腫の増大や不正出血などの副作用もあり投与には注意が必要とされています。
一方、今回の研究ではエクオール含有食品を摂取した患者105名においては、そのような例は認められず、その他の婦人科領域の疾患への影響もみられませんでした。
本研究成果により、エクオールが更年期症状におけるホルモン補充療法の代替ケアとしてのみならず、生活習慣病の各リスク(動脈硬化、骨粗鬆症)軽減においても有用であることが示されました。
*国際医療福祉大学臨床医学研究センター・山王メディカルセンター 太田博明医師、東京ミッドタウンクリニックのMynt Khin氏との共著。
- 【論文名】
- Effects of equol supplement on bone and cardiovascular parameters in middle-aged Japanese women
日本語: 中高年女性におけるエクオール含有食品摂取による各種生活習慣病リスク改善効果の検討
- 【調査方法】
- 1. 対象: 浜松町ハマサイトクリニック 婦人科外来受診患者 105名(40-74 歳:平均 53.9±8.9 歳 )
– 摂取食品:大豆胚芽抽出発酵物エクオール含有食品
– 主成分S体エクオールとして1日10mg ;カプセル剤 1日3錠
– 使用薬剤(HRT):エストラジオール0.62mg+ノルエチステロン2.70mg 週2枚貼付 - 2. 調査内容:質問票調査 、各種パラメータ測定、婦人科関連検査
◆ 日本産科婦人科学会更年期症状 質問票: 開始前、および1ヵ月毎
– 「更年期症状評価表に準じた更年期症状21症状」
- 「症状全般改善度」 ※それぞれ 4段階で評価
◆ 各種パラメータ測定:エクオール産生能は開始前のみ
– 身体測定、血圧脈波(baPWV) 開始前、以後3ヵ月毎
– 採血、尿検査、骨密度・骨代謝 開始前、以後6ヵ月毎
◆ 子宮頸部・体部細胞診、経腟エコー、乳腺エコー、マンモグラフィー
– 開始前、12ヵ月後 (ほか所見・婦人科疾患により適宜)
- 【統計処理】
- Mann-Whitney test、Wilcoxon test、Multiple linear regression ほか
- ■吉形玲美医師
- 産婦人科専門医(医学博士)
東京ミッドタウンクリニック
浜松町ハマサイトクリニック
東京女子医大病院 産婦人科非常勤講師
京都大学医学部附属病院 先制医療・生活習慣病センター共同研究員 - 1997年東京女子医科大学医学部卒業。同大学産婦人科の臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。東京女子医科大学准講師を経て2010年より同大学非常勤講師。女性予防医療を広めたいという思いから、同年7月より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。40代以降の女性の健康の鍵を握る成分として注目される「エクオール」においては、世の中に広く認知される以前からその臨床研究を手がけ、エクオール検査を日本の医療機関として初めて導入するなど、更年期医療に注力している。
- <資格>医学博士、日本産科婦人科学会専門医、臨床研修指導医
日本女性医学会認定女性ヘルスケア専門医・代議員
日本女性心身医学会認定医
日本産科婦人科栄養代謝研究会幹事
日本更年期と加齢のヘルスケア学会幹事 - <所属学会>
日本産婦人科学会、日本女性医学学会(旧日本更年期医学会)、日本抗加齢医学会、日本骨粗鬆症学会、日本女性心身医学会、北米閉経学会、国際閉経学会など
※女性ホルモンや更年期症状等について、下記より吉形玲美医師監修の記事がご覧いただけます。
●働く大人の女性医療メディアILACY(アイラシイ)「レミ先生の診療日記」https://www.ilacy.jp/remi/
※当ページの内容は「2018年5月9日」時点の情報です。