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Vol.24(2021/01/20)当クリニックの抗体検査陽性率/日本と世界の感染動向とワクチン接種率/オミクロン株まとめ(潜伏期間、隔離期間、治療薬)ほか

昨年12月22日にオミクロン株の市中感染が確認されました。その後1か月も経過しないうちに、国内の新規感染者数は過去最高となり、いまだ増加傾向にあります。
今回は、かつてない感染力の強さを示している「オミクロン株」の特徴を詳しく紹介していきます。
有効な治療薬が分かってきている点では、これまでの流行時と状況が異なりますが、いずれにしても当面の間は、更に警戒意識を高めて感染対策を進めていく必要があります。

[1]当クリニックの新型コロナ抗体検査陽性率

人間ドックや外来で新規の感染性抗体の陽性率を毎月チェックしていますが、以下の結果でした。
●2021/09/15~2021/10/14 検査数282 陽性数39 陽性率(%) 13.8
●2021/10/15~2021/11/14 検査数158 陽性数16 陽性率(%) 10.1
●2021/11/15~2021/12/14 検査数140 陽性数15 陽性率(%) 10.7
●2021/12/15~2022/01/14 検査数147 陽性数19 陽性率(%) 12.9
オミクロン株の流行前で、コロナ患者発生数が少なかった時期でも、感染抗体陽性率は10%程度ありました。

図1:東京ミッドタウンクリニックでの抗体検査の陽性率

図1:東京ミッドタウンクリニックでの抗体検査の陽性率

当院の境野が中心にまとめた、コロナ中和抗体の経時的変化を示します。
当院ではアボット社の抗体検査を使用しており、ワクチン2回接種後2週間での中和抗体値の目安は4000 AU以上としていますが、当院での経験的には500AU程度に低下するとブレークスルー感染がおこりやすくなると感じています。

図2:東京ミッドタウンクリニックでの中和抗体の経時変化

図2:東京ミッドタウンクリニックでの中和抗体の経時変化   

[凡例]
縦軸:1回目採血時の中和抗体値を100%とした時の、2回目以降の採血結果時の中和抗体値の減少率(%)
横軸:1回目の中和抗体採血時をDay0とした時の、経過日数(日)

コロナ中和抗体を2回以上血液検査で調べた場合、1回目の検査から3か月程度経過すると抗体価は10~30%に低下するようで、個人毎のばらつきがあります。
それ以上に抗体価が保たれている人は新型コロナ感染の既往の可能性があります。
コロナ抗体が500AU以上の時期は、上記からワクチン2回接種後6か月程度までと考えられます。

[2]日本の感染状況

オミクロン株により第6波が来ています。
感染者数は1月に入って急激に増加し、1日3万人を超えています。
しかしながら重症者数は、1月18日の時点ではまだ低い水準です。

図3:国内の新規感染者、重症者数(2022/1/18時点)

図3:国内の新規感染者、重症者数(2022/1/18時点)

出所:厚生労働省 国内の発生状況など
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1

[3]世界の状況

世界の感染状況を理解するには、ワクチン接種状況を先に理解したほうが良いでしょう。

(出所:図15まで)ファイナンシャルタイムズ  Coronavirus chart: see how your country compares | Free to read | Financial Times (ft.com)
https://ig.ft.com/coronavirus-chart

まず一番ワクチンが一番進んでいるのは下記の国です。

図4:ワクチン接種率上位の国々(1位~9位)

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デンマーク、シンガポール、韓国など2回接種済みの人は80~85%であり、3回目の追加接種が50%近くになっています。
次にはUK、イタリア、フランスなどでも、2回接種済みの人は70~75%超であり、3回目の接種済みも40~50%に達しています。

図5:ワクチン接種率上位の国々(10位~24位)

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日本も2回接種は80%近くに達していますが、他の国に比べて特に多いわけではありません。3回接種は他の国より大変低く1.3%しかありません。

図6:ワクチン接種率上位の国々(49位~53位)

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米国は2回接種率が62%と他国より低く、3回接種は24.5%です。

図7:ワクチン接種率上位の国々(54位~57位)

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この状況を確認したうえで新規発症患者数と死亡者数のグラフを見てみましょう。
まず米国、英国、EU、日本の比較です。新規発症患者数と死亡者数です。

図8:新規感染者数の比較(米国・英国・EU・日本)

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オミクロン株の第6波は2021年秋よりはるかに患者数が多いことがわかります。英国や米国はピークを過ぎてきたようです。

図9:新規死亡者数の比較(米国・英国・EU・日本)

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死亡者数でみると、米国では2021年秋にもピークがありました。英国の死亡者数は増えています。EUの死亡者数のピークは過ぎたようですがオミクロンの影響はこれからでしょう。これらの国と比較すると日本ははるかに少ないようです。
今後の動きを見ないとわかりませんが日本の患者数の少なさは必ずしもワクチン接種率の差だけではなさそうです。
ではアジアで比較します。

図10:新規感染者数の比較(日本・韓国・シンガポール・タイ・台湾)

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新規患者数は2021年秋にシンガポール、タイで多く、韓国は2021年12月でした。これらはデルタ株によるものでしょう。日本、シンガポール、タイの2022年1月からの再上昇はオミクロン株によるものと考えてよさそうです。

図11:新規死亡者数の比較(日本・韓国・シンガポール・タイ・台湾)

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死亡者数でみると、2021年秋にはタイ、シンガポールで多かったことがわかります。韓国の死亡者数は2021年12月に多かったことがわかります。2021年11月以降では日本と台湾では非常に少ない状況です。
では以前に大きなピークを迎えていたインドとオミクロン株が見つかった南アフリカなどはどうでしょうか?

図12:新規感染者数の比較(日本・米国・英国・南アフリカ・インド)

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日本のパターンと比較すると、昨年6月以降はインドの新規発症はほとんど抑えられていたことがわかります。南アフリカは2021年12月にピークがありますが、これはオミクロン株によるものです。南アフリカの2回ワクチン終了率は27%であり、ワクチン接種率が低くても1か月程度でオミクロン感染の山は過ぎるかもしれません。

図13 :新規死亡者数の比較(日本・米国・英国・南アフリカ・インド)

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南アフリカの死亡者状況をみると、新規感染の1か月後ろにずれる可能性がありそうです。
ワクチン接種先進国の、イスラエル、デンマーク、チリ、UAE、シンガポールの状況を見てみましょう。

図14:新規感染者数の比較(米国・イスラエル・デンマーク・UAE・シンガポール・チリ)

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ワクチン先進国でもかなり状況が異なっています。オミクロン株の影響と考えますが、デンマーク、イスラエルの新規感染者数が急激に増えています。ところがチリ、UAE、シンガポールでは新規発症が抑えられています。やはり感染対策そのものの差があるかもしれませんし、人種差かもしれません。

図15:新規死亡者数の比較(米国・イスラエル・デンマーク・UAE・シンガポール・チリ)

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死亡者数でみると、デンマークが高く、イスラエルとチリはそれに比べてかなり低くなります。
UAEとシンガポールはチリよりもかなり低い水準です。

これらのことから、オミクロン株の感染は3回接種が終わった国でもかなり高率になるものの、感染対策や人種差などの要因が大きい可能性があります。
今後のワクチン接種に関して、イスラエルのように4回目の接種の話が出てきていますが、やはり新型コロナ変異株に合わせた複数ワクチンの組み合わせがあと1-2年必要であろうと思います。今後重症化率が低い変異株が続いて通常の感染対策を継続すれば、近いうちにインフルエンザと同様な対応が可能になるのではないかと期待します。

[4]オミクロン株に関してまとめ

オミクロン株は他のデルタ株までの進化系統とかなり異なっています。

図16:新型コロナウイルス系統図

新型コロナウイルス系統図

出所:SCIENCE Where did 'weird' Omicron come from?
https://www.science.org/content/article/where-did-weird-omicron-come

図17

新型コロナウイルス系統図

オミクロン株は入院に至るリスクが下がっているにもかかわらず、感染者数が非常に多いことから、入院や重症化、死亡例は大きく増加していて、医療体制に大きな負荷がかかっています

3回目のワクチン接種で感染予防効果が期待されます。

図18

新型コロナウイルス系統図

それ以上に重症化予防効果が期待できるようです。

図19

新型コロナウイルス系統図

図20

新型コロナウイルス系統図

東京医科大学の濱田篤郎特任教授のコメント
「オミクロン株の重症化リスクはデルタ株と比べて3分の1程度だというデータもあるが、感染者の数が増えれば重症化する人も増える。今は感染した人は若者が多いが高齢者に広がるとより重症化しやすい可能性がある。重症化リスクが低いといっても注意が必要な状況であることに変わりはない」

「オミクロン株は上気道という気道の上のほう、鼻やのどにくっつきやすく、そこで増えやすいといわれている。そのためウイルスがくしゃみやせきで周辺に飛び散りやすく、感染しやすいのではないかと考えられる。デルタ株のときも屋外でバーベキューをしていた人が感染した事例があったが、オミクロン株はより感染力が強いため、これまで以上に注意してもらいたい。マスクの着用や手洗い、密を避けるといった対策を続けて、ワクチンの追加接種が受けられる状況になれば、受けてほしい」

出所:NHKニュース「新型コロナ感染1万人超 オミクロン株わかってきたこと」(2022年1月12日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220112/k10013426651000.html

【追加情報】

[1]オミクロン株は上気道の細胞で非常に増殖しやすい

The SARS-CoV-2 variant, Omicron, shows rapid replication in human primary nasal epithelial cultures and efficiently uses the endosomal route of entry https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.31.474653v1

[2]オミクロン株は無症状の人からの感染が30%にまで達している可能性がある。
デルタ株ではこの数値は1~2.6%であった。

High Rate of Asymptomatic Carriage Associated with Variant Strain Omicron
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.20.21268130v1

[5]オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

潜伏期間が短い分だけ、感染したかどうか短期間に判別できます。ウイルス排泄の持続期間を考えると、従来株より2日以上は短縮できるはずです。

図21

オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

出所:産経新聞「濃厚接触者待機短縮検討へ オミクロン 感染研『潜伏3日前後』」(2022年1月12日)
http://a.msn.com/01/ja-jp/AASH9Js?ocid=se

感染者の隔離期間、濃厚接触者の隔離期間に関しては、国立病院機構近畿中央呼吸器センターの倉原優先生の記事をご紹介します。

出所:(図22・図23)Yahoo! ニュース「新型コロナ陽性者・濃厚接触者の隔離期間の現状まとめ 諸外国は短縮方向へ」(2021/12/29)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20211229-00274875

陽性患者の療養解除は以前と同様です。

図22

オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

濃厚接触者には健康観察(自宅待機)期間が設けられています。感染可能期間内に患者と最終接触した日を0日目として翌日から「14日間」になります。家族に陽性者がいた場合、10日間+14日間で最大「24日間」に到達することがあります。非常に長く、社会的インパクトが甚大です。

図23

オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

上記のような濃厚接触者の自宅待機のために、医療機関従事者やエッセンシャルワーカー不足が問題として生じてきました。そこで1月14日に次のように変更されました。

図24

オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

医療従事者に加え警察や消防、公共交通、それに介護や保育など社会や暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」については、自治体の判断で感染者に最後に接触した日から6日目に実施するPCR検査や抗原定量検査、または6日目と7日目に実施する抗原定性検査で連続して陰性であれば待機を解除です

出所:NHKニュース「"社会機能を維持" 濃厚接触者の待機期間短縮へ」(2022/1/14)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220114/k10013430341000.html

厚生労働省は1月12日、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者になった医療従事者について、ワクチン2回接種済みで毎日陰性確認することを条件に勤務継続を認めると全国の自治体に通知しました。

https://www.mhlw.go.jp/content/000879698.pdf

【要件】

・他の医療従事者による代替が困難な医療従事者であること。
・新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みで、2回目の接種後 14 日間経過した後に、新型コロナウイルス感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者であること。
・無症状であり、毎日業務前に核酸検出検査又は抗原定量検査(やむを得ない場合は、抗原定性検査キット)により検査を行い陰性が確認されていること。
・濃厚接触者である当該医療従事者の業務を、所属の管理者が了解していること。

政府が新型コロナウイルス対策の基本的対処方針の中で「緊急事態宣言下でも事業継続が必要な事業者」として示している「エッセンシャルワーカー」の業種は以下の通り。

医療関係者(病院・薬局、医薬品・医療機器の輸入・製造・販売、献血を実施する採血業、入院者への食事提供など患者の治療に必要な全ての物資・サービスに関わる製造業、サービス業)

高齢者、障害者など支援が必要な人の居住や支援に関する関係者(介護老人福祉施設、障害者支援施設などの運営関係者、施設入所者への食事提供など高齢者や障害者が生活する上で必要な物資・サービスに関わる製造業、サービス業)

自宅などで過ごす国民が必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスを提供する関係事業者
①インフラ運営関係(電力、ガス、石油・石油化学・LPガス、上下水道、通信・データセンターなど)②飲食料品供給関係(農業・林業・漁業、飲食料品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販など)③生活必需物資供給関係(家庭用品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販など)④宅配・テイクアウト、生活必需物資の小売り関係(百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンターなど)⑤家庭用品のメンテナンス関係(配管工・電気技師など)⑥生活必需サービス(ホテル・宿泊、銭湯、理美容、ランドリー、獣医師など)⑦ごみ処理関係(廃棄物収集・運搬、処分など)⑧冠婚葬祭業関係(火葬の実施や遺体の死後処置に係る事業者など)⑨メディア(テレビ、ラジオ、新聞、ネット関係者など)⑩個人向けサービス(ネット配信、遠隔教育、ネット環境維持に係る設備・サービス、自家用車の整備など)

社会維持の観点から宣言期間中も企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者

①金融サービス(銀行、信金・信組、証券、保険、クレジットカードその他決済サービスなど)②物流・運送サービス(鉄道、バス・タクシー・トラック、海運・港湾管理、航空・空港管理、郵便など)③国防に必要な製造業・サービス業の維持(航空機、潜水艦など)④企業活動・治安の維持に必要なサービス(ビルメンテナンス、セキュリティー関係など)⑤安全安心に必要な社会基盤(河川や道路の公物管理、公共工事、廃棄物処理、個別法に基づく危険物管理など)⑥行政サービスなど(警察、消防、その他行政サービス)⑦育児サービス(託児所など)

その他。医療、製造業のうち、設備の特性上、生産停止が困難なもの(高炉や半導体工場など)、医療・支援が必要な人の保護・社会基盤の維持などに不可欠なもの(サプライチェーン上の重要物を含む)を製造しているもの。また、医療、国民生活・国民経済維持の業務を支援する事業者など。

[6]外国における感染者・濃厚接触者の隔離期間

アメリカ疾病対策センター(CDC)は2021年12月27日に、新型コロナ陽性者や濃厚接触者の隔離期間・自宅待機期間について、5日間へ短縮する推奨を発出しました。

そして2022年1月9日の修正では追加接種を条件として変更しています。

出所:米国CDC  Quarantine and Isolation  Updated Jan. 9, 2022
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/your-health/quarantine-isolation.html

(表1)

濃厚接触の場合:
ワクチン2回接種5か月以降に追加接種を受けていない人
5日間以上自宅待機:自宅でマスク着用。
その後に検査を受ける
陰性なら、自宅待機不要であるが10日目まで症状を経過観察。
経過観察中に症状出現したら、直ちに自宅待機して他人と接触せず、検査を受ける。
*全員:10日間はマスク着用
旅行及びハイリスクの人との接触を避ける
濃厚接触の場合:
ワクチン2回接種5か月以降に追加接種を受けた人
もしくは過去90日以内に新型コロナ感染が確認されている人
症状がなければ自宅待機は不要。
5日以上経ってから検査を受ける。
陰性なら、引き続き10日目まで症状を経過観察。
経過観察中に症状出現したら、直ちに自宅待機して他人と接触せず、検査を受ける。
*全員:10日間はマスク着用
旅行及びハイリスクの人との接触を避ける。
新型コロナ感染が確認された人 自宅で5日間待機し、他人と接触しないこと、マスクも着用。
5日後の時点で、過去24時間無熱で症状も改善していれば自宅待機終了。
はじめから無症状なら5日終了の時点で自宅待機も終了。
新型コロナ症状が中等度以上の場合には10日間自宅待機して他人と接触しない。医師に相談する。
*全員:10日間はマスク着用
旅行及びハイリスクの人との接触を避ける

*感染日・感染者との接触日は0日目とする。翌日から1日目としてカウントする。

図25

オミクロン株の潜伏期間と、感染者・濃厚接触者の隔離期間

上記のように感染者でも5日間で自宅隔離免除という動きになってきているようです。

出所:産経新聞「欧州で自主隔離期間の短縮相次ぐ 休業者増大、経済マヒ懸念」(2022/1/13)
https://www.sankei.com/article/20220113-2JRB2XE2ANJGHAXL2JVE25M2MA/

[7]感染はどこまで広がるのか

オミクロン株は、世界各国で感染の主流となっています。

新型コロナウイルスの変異ウイルス、オミクロン株について、WHO=世界保健機関はヨーロッパや中央アジアなどでは今後、6週間から8週間で人口の半数を超える人たちが感染するおそれがあるとして、各国に対してワクチン接種を加速させるよう改めて呼びかけました。

WHOヨーロッパ地域事務局のクルーゲ事務局長は11日の記者会見で、変異ウイルスのオミクロン株は感染力が非常に強く、特に西ヨーロッパの国々ではすでに感染の主流になっていると指摘しました。

また、バルカン半島の国々でもオミクロン株が主流になりつつあるとしています。
そのうえでクルーゲ事務局長は、WHOヨーロッパ地域事務局が管轄するヨーロッパとロシア、中央アジアなど53か国について「今後6週間から8週間で人口の半数を超える人たちがオミクロン株に感染するおそれがある」と述べ強い懸念を示しました。

一方でクルーゲ事務局長はワクチンを接種していればオミクロン株に感染しても重症化したり死亡したりするリスクを抑えられるとして、各国に対してワクチン接種を加速させるよう改めて呼びかけました。

出所:NHKニュース「欧州・中央アジア 6~8週間で人口の半数超が感染おそれ WHO」(2022/1/12)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220112/k10013425871000.html?utm_int=detail_contents_news-related_008

続いてやや楽観的ですが、オミクロンの収束時期についての記事をご紹介します。

南アのスティーヴ・ビコ学術病院の研究者らが国際感染症学会誌に報告した研究では、昨年11月中旬以降に入院した466人の感染者と、それ以前に入院した3976人の患者を比較したところ、以前には21・3%だった死亡率がオミクロン急増時には4・5%だったとした。入院期間もオミクロン株感染者は平均4日後に退院したが、他の変異株感染者は8・8日を要したことから半減したという。
このパターンが世界的にも繰り返されれば、現状のパンデミックから「『エンデミック(特定地域で繰り返し発生する感染状況)』の時期に入る前兆になるかもしれない」と指摘している。

一方、米ファイザーの幹部は12月、パンデミックが今後1~2年継続し、2024年にエンデミックになるとの見通しを示したという。

浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生は「南アや英国の研究から、重症化率の低下はほぼ確実だ。潜伏期間も中国・武漢で発生した当初は5・5日間程度、デルタは4~5日だったが、オミクロンは3~3・5日で、風邪をひき起こすコロナに相当近づいている。オミクロンもしくは次の変異株を経て、現行の風邪のウイルスの『5番目』になる可能性もある」「オミクロン株の感染者は2月ごろにピークを迎えるが、第5波ほどの重症者は出ず3月ごろに収束するのではないか。6~7月ごろに、より感染力が強く、短い潜伏期間で重症化しづらい変異株の波が発生するが、ワクチンの3回目接種拡大や経口薬の承認といった条件がそろえば収束する可能性もある。今年の夏はマスク着用の是非に関する議論が浮上してもおかしくない」

出所:Yahoo! ニュース「オミクロンでパンデミック終了か、海外では感染者数が1カ月で頭打ち」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe3c3029d3e9cfb971a60045232ef07dbb190787

[8]新型コロナ治療薬に関して

昨年12月24日に国内初の新型コロナ経口抗ウイルス薬が特例承認され、治療薬に関する期待が高まっています。

図26:国内で開発中の新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬

図27:国内における新型コロナウイルス感染症の治療薬

(日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第11版」を基にメディカルトリビューン編集部作成)

・抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブ:発症から原則7日以内投与という制限があり、治療が遅れると効果が低下してしまう。外来治療で使えるようにしたことで処方が一気に広がり、重症化抑制に大きく貢献した。同薬がなければ第五波における医療はさらに逼迫していたと考えられる

・モルヌピラビル(メルク:ラゲブリオ)は、COVID-19に対する抗ウイルス薬レムデシビルと同じ合成ヌクレオシド誘導体である。英国で昨年11月4日に承認された。SARS-CoV-2がヒトの細胞に入り複製を開始すると、モルヌピラビルがウイルスのRNAに滑り込み、ウイルスRNAにエラーを起こさせて、複製を防いで抗ウイルス効果を発揮する。

・Paxlovid(ファイザー:パクスロビド)は、EMAが昨年12月16日、米食品医薬品局(FDA)が同月22日に緊急使用許可を認めた。3CLプロテアーゼ阻害薬であるnirmatrelvirに低用量のリトナビルを合わせて内服する。抗ウイルス薬のnirmatrelvirが、SARS-CoV-2の自己複製に必要な酵素SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼの働きを阻害して、ウイルス増殖を抑制する。リトナビルは古典的なHIVに対するプロテアーゼ阻害薬だが、他のプロテアーゼ阻害薬のブースター薬として使われることが多い。リトナビルによりnirmatrelvirの代謝が抑制されることで血中濃度が高く維持される。

・モルヌピラビルとpaxlovidはいずれも、原則発症5日以内の治療開始が必要

・入院・死亡リスク低減効果はモルヌピラビルが30%、paxlovidが89%と大きな差がある

・モルヌピラビルを妊娠中または授乳中の女性に推奨しない。妊娠する可能性のある女性は同薬を服用中および4日間は避妊を行うべきとした。

・paxlovidは抗ウイルス薬nirmatrelvirとその効果を高めるリトナビルを併用する。リトナビルは肝臓の薬物代謝酵素CYP3Aと強い親和性を示し、他の薬剤(特にCYP3Aで代謝される薬剤)の代謝を競合的に阻害して血中濃度を上昇させることがあるため、注意が必要となる。CYP3Aは多くの医薬品の代謝に関与しており、例えばスタチン系高脂血症治療薬、カルシウム拮抗薬、抗凝固薬ワルファリン、免疫抑制薬タクロリムスなどと併用すると、相互作用を起こして血中濃度が上昇する恐れがある。

出所:メディカルトリビューン「経口薬登場でコロナ治療はどう変わるか:治療は大きく前進も、課題山積」(2022/1/7)
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2022/0107543087/