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Vol.23(2021/09/24)当クリニックの抗体検査陽性率/日本と世界の最新動向/ワクチン接種後の死亡率低下/ブレークスルー感染と中和抗体/3回目の接種、ほか

感染第5波のピークは過ぎ、ワクチン接種は進みつつある状況ですが、引き続き感染対策を要する状況に変わりはありません。
今回は、第5波の背景にある「ブレークスルー感染」や「中和抗体」、「追加接種」について詳しく紹介していきます。

ワクチンを2回接種することによって重症化や死亡を抑える効果は予て示されているところですが、海外の論文等では、ワクチン接種で得られる中和抗体価の個人差がブレークスルー感染に影響を及ぼしていることや、3回目のワクチン接種による効果が発表され始めています。今後の更なる研究成果が期待されるところです。

今回のトピックス

1. 当クリニックでの抗体検査陽性率

2. 日本の発生状況(新規陽性者数、重症者数)

3. 世界の発生状況(新規陽性者数、死亡者数、ワクチン接種数等)

4. ワクチン接種後の死亡率が低下していることは確かです

5. 感染者とワクチン接種者の中和抗体に関する日本の研究

6. 感染後およびワクチン接種後の中和抗体に関する海外のデータ

7. 感染者の抗体は低くても意味があるかもしれません

8. 感染者にワクチンを接種すると、1回でも中和抗体は上昇し、2回投与後には中和抗体はなかなか低下しません

9. 結合抗体、中和抗体の世界的標準化が始まっています。

10. 中和抗体のレベルと、その後の新型コロナ予防効果に関する検討です。

11. ブレークスルー感染に関して

12. コロナのブレークスルー感染、感染前の中和抗体価と関連か?

13. 3回目のワクチン接種はどうしましょうか?

14. 実際に3回目の追加ワクチン接種の効果は?

15. 追加の接種をめぐって

[1]当クリニックでの抗体陽性率

人間ドックや外来で新規の感染性抗体の陽性率を毎月チェックしていますが、
●7月15日から8月14日では検査数246件、陽性数31件、陽性率12.6%でした
●8月15日から9月14日では検査数386件、陽性数53件、陽性率13.7%でした
デルタ株による不顕性感染が増えているようです。

図1:東京ミッドタウンクリニックでの抗体検査の陽性率

図1:東京ミッドタウンクリニックでの抗体検査の陽性率

[2]日本の発生状況(新規陽性者数、重症者数)

第5波はピークを過ぎてきていますが、まだまだ多い状況です。

図2:新規陽性者数推移(2021年9月23日時点)

新規陽性者数推移

出所:厚生労働省「国内の発生状況など」
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1

図3:重傷者数推移(2021年9月23日時点)

重傷者数推移

出所:厚生労働省 国内の発生状況など(2021年9月23日時点)
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

[3]世界の発生状況(新規陽性者数、死亡者数、ワクチン接種数等)

10万人当たりの新規感染者数です。UK,USと比較すると日本やEUは少ないことがわかります。

図4:人口10万人当たりの新規陽性者数推移 米国・英国・EU・日本の比較(2021年9月23日時点)

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次は10万人当たりの7日間の死亡者数です。感染者数はUK、USともに同程度ですが、死亡者数はUKが低くコントロールされています。EU,日本はもっと低い数です。

図5:人口10万人当たりの7日間死亡者数推移 米国・英国・EU・日本の比較(2021年9月23日時点)

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ところがアジアで比べてみると、新規感染者数は、日本はタイ、ベトナムと同程度多く、なぜかインドは低くなっています。日本は低下してきたことが分かります。中国は発生がほとんど報告されていません。

図6:人口10万人当たりの新規陽性者数推移 日本・インド・タイ・中国・韓国・ベトナムの比較(2021年9月23日時点)

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死亡者数でみると、日本はタイ、ベトナムなどよりずっと抑えられていることが分かります。
特に感染者数に比べて死亡数の多いベトナムでロックダウンを実行した理由が分かります。

図7:人口10万人当たりの7日間死亡者数推移 日本・インド・タイ・中国・韓国・ベトナムの比較(2021年9月23日時点)

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次はワクチン接種率です。100人当たり何回の接種をしたかのグラフです。
日本は急速に増やし、USを抜き、EUと同程度です。
イスラエル、中国はトップクラスです。

図8:100人当たりのワクチン接種量推移 英国・イスラエル・米国・EU・中国・インド・日本の比較(2021年9月23日時点)

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一番大事な情報は、平年と比べて新型コロナの影響で死亡者数が増えたかどうかでしょう。
下記の棒グラフは人口100万人当たりの超過死亡数です。
以前から言われている通り、ペルーが最多です。ブラジル、イタリア、スペイン、UK、USも超過死亡をはっきり認めます。
一番下を見ると、シンガポール、フィリピン、日本、オーストラリア、台湾は例年より死亡数が減っているのが分かります。公衆衛生全体としてのコントロールは良好であったと言えるでしょう。

図9:人口100万人当たりの超過死亡者数(2021年9月23日時点)

重傷者数推移FINACIAL TIMES  Coronavirus tracker: the latest figures as countries fight the Covid-19 resurgence

出所:FINACIAL TIMES  Coronavirus tracker: the latest figures as countries fight the Covid-19 resurgence(2021年9月23日時点)
https://www.ft.com/content/a2901ce8-5eb7-4633-b89c-cbdf5b386938

[4]ワクチン接種後の死亡率が低下していることは確かです

2021年6月と7月の比較の結論は
●7月のコロナ感染陽性者数は全141,303人中、65歳未満が135,350人と96%を占めた。7月の感染者数は、6月と比較して70歳以上で減少し、65歳未満で増加していた。

●コロナ感染陽性者の致死率を比較すると、7月の致死率は6月と比較して、全年齢で0.60%から0.15%に減少し、高齢者(65歳以上)で4.1%から2.4%に、65歳未満で0.076%から0.047%に減少していた。

●ワクチン接種による新型コロナウイルス感染陽性者の致死率への影響をみると、高齢者における死亡者は、未接種者は3,289人中93人(2.83%)、1回の接種で1,148人中27人(2.35%)、2回の接種で983人中12人(1.22%)であった。

未接種者と、1回接種者、2回接種者で感染者数が違うことに気づくと思います。
また高齢者の死亡率も明らかに低下しています。

図10

コロナ感染陽性者のワクチン接種回数と致死率(2021年7月)

出所:厚生労働省 第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日)資料2-6「年齢区分別の新型コロナウイルス感染陽性者数と死亡者数-年齢区分別のワクチン接種についても検証- (2021年7月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000826597.pdf

[5]感染者とワクチン接種者の中和抗体に関する日本の研究

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者とSARS-CoV-2ワクチン接種者で、富山大学のチームがCRNT法という方法で検討しました。

COVID-19回復期患者における抗体量の中央値は35.0U/mL〔四分位範囲7.63~137.0U/mL〕でした。
ワクチン2回接種後の抗体量の中央値も2,112U/mL(四分位範囲 1,275~3,390U/mL)と高く、COVID-19回復期患者に比べて60.3倍でした。
*COVIDの症状により抗体量は大きく変わります

出所:Medical Tribune ワクチン接種者の抗体量は感染者の60倍(2021年06月04日)
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0604536705/

[6]感染後およびワクチン接種後の中和抗体に関する海外のデータ

ウイルスの株ごとに抗体の効き具合を調べたもので、通常の医療機関で行う検査ではありませんが、参考になります。

●ウイルス株はA.1変異株、B.1株、B.1.1.7株、N501Y株を使用しました。

●回復期患者の血清検体での抗体価は91-168でした。

●mRNA-1273ワクチン接種者の血清検体での抗体価は804-1709でした。

●ウイルス株により抗体の効果が異なっていました。抗体価はmRNA-1273ワクチン接種後には、回復期患者の9-10倍程度上昇することが分かりました。

図11:SARS-CoV-2変異株に対する中和抗体反応

SARS-CoV-2変異株に対する中和抗体反応

*グラフは対数軸です。1目盛り上昇すると10倍です。

出所:JAMA Network Neutralizing Antibodies Against SARS-CoV-2 Variants After Infection and Vaccination (Research Letter) JAMA. 2021 May 11;325(18):1896-1898
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777898

[7]感染者の抗体は低くても意味があるかもしれません

新型コロナウイルスの変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体から逃避するリスクが懸念されていますが、今回の研究において新型コロナウイルス感染症回復者が変異株に交差結合する抗体を獲得することが分かりました。また、この抗体の質(中和比活性・交差性)は時間と共に向上することを発見しされました。
従って既感染者は抗体の値が低くても、感染予防の観点からは意味があると考えられます。

図12:感染者の抗体量と質の経時変化

本研究成果は、2021年7月2日にImmunityに掲載されました。
「Temporal Maturation of Neutralizing Antibodies in COVID-19 Convalescent Individuals Improves Potency and Breadth to Circulating SARS-CoV-2 Variants」

出所:国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース 新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体の質が時間と共に向上することを発見(2021年7月5日)
https://www.amed.go.jp/news/release_20210705-02.html

[8]感染者にワクチンを接種すると、1回でも中和抗体は上昇し、2回投与後には中和抗体はなかなか低下しません

非感染者は、ワクチン1回目では中和抗体はあまり上昇せず、2回目の後は上昇しますが、3か月後にはかなり低下します。

図13:既感染者(左)/非感染者(右)の中和抗体価

左は既感染者の中和抗体の反応、右は非感染者の中和抗体の反応です。
V0はワクチン前、V1_20は1回目接種20日後、V2_20は2回目接種20日後、V2_90は2回目接種90日後です。
既感染者の免疫・抗体反応はやはり良いようです。

出所:International Journal of Infectious Diseases  Faster decay of neutralizing antibodies in never infected than previously infected healthcare workers three months after the second BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine dose
https://www.ijidonline.com/article/S1201-9712(21)00683-4/fulltext

[9]結合抗体、中和抗体の世界的標準化が始まっています。

今後はBAU、IUという単位で評価することになるでしょう。
当クリニックの外来では、英文で抗体価をBAU、IUで表記する証明書フォーマットを既に用意しています。

まず、当クリニックでも使用している、Abbott社の抗体キットは感度、特異度ともトップクラスであることがわかります。

図14

WHOは世界中で行われている抗体検査の標準化のために、まずは標準血清を作成し、全世界の研究機関で同時に検討してもらいました。
その結果は下記の通りで、標準血清の中和活性IU,結合活性BAUはともに1000と定義されました。
今後は各検査キットの結果の表記と、それに対応するIU、BAUの表記が求められるようになるでしょう。

図15

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「WHO/BS.2020.2403 Establishment of the WHO International Standard and Reference Panel for anti-SARS-CoV-2 antibody」によると、感染後の血清を確認したところ
●軽症感染の回復期血清は 20-30 IU程度
●中等度感染の回復期血清は 150 IU 程度
●重症感染の回復期血清は 1000 IU程度でした。

出所:国立医薬品食品衛生研究所 コロナ診断薬チーム 抗体検査担当:生物薬品部,医薬安全科学部 「新型コロナウイルス抗体検査キットの性能評価と標準品策定に関する海外動向」(2021年7月)
http://www.nihs.go.jp/dbcb/COVID19/COV2_antibody_assay_international_trends_200712.pdf

[10]中和抗体のレベルと、その後の新型コロナ予防効果に関する検討です。

デルタ株の前のデータも含まれていますが参考になります。

まずは図が分かりにくいですが、Convalescentは回復期血清、BNT162b2はファイザーワクチン、mRNA-1273 はモデルナワクチンです。

ファイザーワクチンの感染予防効果は95%程度で、中和効果は3倍程度です。
モデルナワクチンの感染予防効果も95%程度で、中和効果は4倍程度です。
効果が低いワクチンもあることが分かります。

図16:中和と予防効果の関係

中和と予防効果の関係

次の図のbでは、中和効果は250日たつと、最初に4倍でも1倍に低下(1/4)することが分かります。
しかしながらこれは95%予防効果が89%に低下することを示すだけであり、中和抗体価の変化ではありません。
現実的には中和抗体価は1/4よりもっと低下します。

図cの最初の予防効果95%のグラフをみると、軽症感染の予防と重症感染の予防効果が異なることが分かります。軽症感染の予防効果は250日で95%から75%程度に低下します。しかしながら重症感染の予防効果は250日で100%から97%程度に低下するだけです。
ワクチン接種後250日(約8か月)経つと、軽症の感染はありますが、重症感染がおこりにくいことが分かります。

図17:重症化の予防効果

出所:Nature Medicine Neutralizing antibody levels are highly predictive of immune protection from symptomatic SARS-CoV-2 infection
https://www.nature.com/articles/s41591-021-01377-8

[11]ブレークスルー感染に関して

厚労省のサイトに、非常にわかりやすく書いてくださっています。

■ブレークスルー感染とは
どの感染症に対するワクチンでも、その効果は100%ではありません。ワクチンを接種した後でも感染する可能性があり、それを「ブレークスルー感染」と呼びます。新型コロナワクチンの場合では、2回目の接種を受けてから2週間くらいで十分な免疫の獲得が期待されますので、それ以降に感染した場合にブレークスルー感染と呼んでいます。

■免疫ができても感染してしまう訳
一度罹ると「二度罹り」しない感染症もあれば、何度も繰り返し罹る感染症もあります。前者には麻疹や水痘(水ぼうそう)などがあり、後者にはインフルエンザやロタウイルス胃腸炎などがあります。これらの感染症にはワクチンがありますが、前者ではブレークスルー感染は少なく、後者ではしばしば見られます。その違いは何なのでしょう?

麻疹や水痘では鼻や喉の粘膜からウイルスが侵入した後、扁桃や近くのリンパ節でウイルスが増え、ついで血液の流れに乗って全身にウイルスが拡がってから(ウイルス血症)、発熱や発疹などの症状が現れ発病(発症)します。つまりウイルスが入り込んでから発病するまでの間に、10日や2~3週間の潜伏期があります。既に罹っていたり、2回ワクチンを接種したりして免疫ができている人では、血液中の抗体がそこに入って来たウイルスをブロックしてくれるので、発病しなくて済みます。
抗体の量が少なくなってしまった人でも、感染して、ウイルスが鼻や喉の粘膜から侵入した時点で刺激を受けて抗体の産生を再開し、ウイルスが血液の中に入って来る頃までには十分な量の抗体が出来上がります。そのため、二度と発病しないのです。

一方、インフルエンザの場合、鼻や喉の粘膜に侵入したウイルスは、そこですぐに増殖を始め呼吸器粘膜を傷害して、数日で発病(発症)します。ワクチンを接種して血液中に抗体があっても、呼吸器粘膜の感染を防ぐことは難しいし、発病を防ぐことも十分ではありません。でも抗体は肺の中に滲み出てきて肺炎を起こさないようにブロックすることで、重症化を防ぎます。

新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じように、鼻や喉の粘膜で増えて数日で発病します。さらに肺にまで感染が及ぶと重症化の恐れが出てきます。血液の中の抗体は鼻や喉の粘膜では効き目が弱く、感染を防ぐ効果はあまり強くありませんが、肺では重症化を防ぐ効果を発揮します(図18)。

図18

このように一般に呼吸器感染症を防ぐワクチンの効果は、「重症化阻止効果>発病阻止効果>感染阻止効果」という序列があります。

■デルタ株になって増えたブレークスルー感染
ウイルスは変異を繰り返し、何か自分に有利な変化を遂げたものがやがては主流のウイルスになります。デルタ株のウイルスは、感染力が拡大しただけではなく、ワクチンによって獲得された免疫が効きにくいと考えられています。   
ファイザー社や武田/モデルナ社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは非常に有効なワクチンであり、従来株のウイルスに対しては、発病を防ぐ効果94~95%に加え、イスラエル(ファイザー社ワクチンを使用)においては感染そのものを防ぐ効果が91.5%もあると報告されていました(※1)。

しかし、その後イスラエルではデルタ株にほぼ置き換わってしまい、その結果、発病や感染を防ぐ効果が64%まで下がってしまいました(一方、入院を防ぐ効果は93%と高いレベルを維持しています)(※2)。

■流行が拡大すれば、次々に変異が起こり続ける
ウイルスの変異はある一定の確率で生じ、流行拡大によって感染者が増えれば増える程、変異を繰り返して行きます。その中で感染力が拡大したり、ワクチンによる免疫から逃れる性質を獲得したりした変異株が生じると、やがてはそれに置き換わってしまい、コロナとの戦いはいつまで経っても終わりません。   
厄介な変異株の出現を食い止めるために最も有効な手段は、ワクチン接種を含む感染予防対策を徹底し、流行の拡大を防ぐことです。

■接種後、長い時間が経過すると増えていくブレークスルー感染
実際に罹ってしまったりワクチンを接種したりすることで、免疫を獲得して抗体ができても、使う機会がなければ段々抗体の量は少なくなっていきます。抗体の量が少なくなっていても、感染後は直ちに作り出すので重症化を防ぐのには間に合うことが多いのですが、発病や感染を防ぐのには間に合いません。

先に紹介したイスラエルにおけるワクチンの有効性(発病や感染そのものを防ぐ効果)の低下は、デルタ株に置き換わってしまったことに加え、2回の接種が終了してから半年前後経ってしまったことも影響していると思います。そこでイスラエルを含む幾つかの国々では、ブレークスルー感染が増えて来たことを受けて3回目の接種を始めています。

■ブレークスルー感染は軽症です
これまで述べましたように、ワクチン接種を2回済ませた人のブレークスルー感染はデルタ株に置き換わった後で増えて来ましたが、ワクチンによって重症化を防ぐ効果は高いレベルで維持されています。米国CDCのデータに基づき「ワクチン接種を済ませた人が、新型コロナウイルスのブレークスルー感染のために亡くなる恐れは0.001%未満」と報告されています(※3)。

■ワクチン接種率を高める意義
新型コロナウイルス感染症で重症化する人が病院に溢れてしまうと、本来であれば入院して十分な治療を受けることで救える命が失われる恐れがあります。また、病院が患者さんで溢れてしまうと、その他の病気や怪我で緊急に対応しなければならない患者さん達の命も危機に晒されます。しかし、多くの人たちがワクチンを接種していれば、医療は本来の機能を維持することが出来ます。

また、ワクチン単独で流行を食い止めることは出来ませんが、他の感染対策と一緒にワクチン接種が進んでいくことによって、社会の中での流行を食い止めることにも大いに役に立ちます。
ですから、ワクチン接種は非常に重要です。

■ワクチン接種した人もこれまで通りの感染対策を
ワクチンを接種していれば、ブレークスルー感染が起こってもほとんどの場合、重症化を免れます。しかし、感染することはあるし、感染しても発病しないことも多いので自分ではそれと気付かないままでいます。

もしマスクを着用しないで会話をしたり、3密の場所に出入りしたりすると、他の人にうつしてしまう恐れがあります。ワクチン接種が十分に進んでいない間は、その人達に感染が拡がらないように、これまで通りの感染対策を続けていただきたいと思います。

(参考資料)
※1:Impact and effectiveness of mRNA BNT162b2 vaccine against SARS-CoV-2 infections and COVID-19 cases, hospitalisations, and deaths following a nationwide vaccination campaign in Israel: an observational study using national surveillance data
※2:Explanation About the Effectiveness of the Vaccine for Coronavirus in Israel
※3:A Statistical Analysis of COVID-19 Breakthrough Infections and Deaths

出所:厚生労働省 「ワクチン接種後のブレークスルー感染」 なぜワクチンと感染予防対策の両方が必要なのか|新型コロナワクチンQ&A(2021年08月27日)
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0006.html

[12]コロナのブレークスルー感染、感染前の中和抗体価と関連か?

イスラエルの医療従事者(1497名)でファイザーワクチンを接種後に、定期的にPCR検査などでチェックしていたところブレークスルー感染を起こした(39名)に関して中和抗体価を調べました。
感染群のSARS-CoV-2検出前1週間以内の中和抗体価は、非感染のコントロール群に比べて0.36倍と低値でした。ほとんどのブレークスルー感染者が軽症か無症状でしたが、うち19%で症状が6週間以上続きました。
検査を行った85%がα株でした。
* 論文は7月のものでデルタ株の前の情報が多く含まれています

下記の図Aでは抗体価はブレークスルー感染を起こした人では150-200程度でした。図Bでも抗体価の最高値も同様の数値でした。最高値で見るとブレークスルー感染を起こさなかった人の最高抗体価は、ブレークスルー感染を起こした人の6倍程度であるように見えます。

彼らの抗体測定方法と、アボット社の抗体測定方法の直接比較はできませんが、アボット社の抗体価が最初から500-600前後の場合には特に、一部の人が軽症のブレークスルー感染を起こす可能性がありうると考えられます。

図19:ブレークスルー感染者と非感染者の中和抗体価の比較

ブレークスルー感染者と非感染者の中和抗体価の比較

出所:he NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE  Covid-19 Breakthrough Infections in Vaccinated Health Care Workers
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2109072

[13]3回目のワクチン接種はどうしましょうか?

NHKの記事に、非常に詳しく述べられています。

2回接種したあとで従来の新型コロナウイルスに対して発症を予防する効果はファイザーとモデルナでは90%を超え、アストラゼネカもおよそ70%と確認されています。

図20

中東のイスラエルでは、60歳以上の人たちを対象に3回目の接種を始めました。 感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の影響で新型コロナウイルスの感染者が再び増加しているためです。一時は、1日の新規感染者が1桁にまで減りましたが、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の影響で再び増加し、連日2000人以上の感染者が出ています。

図21

イスラエルでは、16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終えています。しかし、接種を終えていても重症化するケースが目立つとして、60歳以上の人に対し、3回目の接種を行うことを決め、対象者への接種が始まりました。

イスラエルでは、ほとんどの人が製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンを接種していて、3回目も同じワクチンを接種することになります。
3回目の接種の対象となっているのは、2回目の接種から5か月以上が経過している60歳以上の人たちです。 一方、イスラエル政府は、59歳以下の人たちへの3回目の接種については、これまでのところ言及していません。

イギリス政府は、70歳以上の高齢者などを対象に9月から接種を始める計画です。
ドイツの保健当局は、新型コロナウイルスワクチンの接種を終えた高齢者などに対し、9月から3回目となる追加の接種を行うことを決めました。
スウェーデンの保健当局も、80歳以上の高齢者など重症化するリスクが高い人を対象に、3回目の接種を早ければことし秋に実施する計画を明らかにしました。
日本でも、河野規制改革担当大臣が、来年、3回目の接種を行うことになるのではないかとの見方を示しています。専門家も、「半年程度で追加の接種を行うというのは、ありえる話だ」と指摘しています。

「いま使われているワクチンは半年くらいで免疫の効果が薄れてくるのではないかと言われている。仕組みは違うが、インフルエンザのワクチンでは効果があるのは半年程度とされている。新型コロナのワクチンでも半年程度で追加の接種を行うというのは、ありえる話だ」

■ワクチン接種 3回目の効果は
ファイザーはワクチンが効きにくい変異ウイルスが増えているほか、ワクチンの効果が時間がたつとともに低下していくとして3回目の接種によってワクチンの効果がどのくらい高まるかを確認する臨床試験を行っています。

図22

7月28日にファイザーが公表した資料によりますと、3回目の接種をした人はウイルスの働きを抑える中和抗体の値が、従来の新型コロナウイルスや、変異ウイルスの「ベータ株」に対しては、2回目の接種後と比べ、5倍から10倍に増えたほか、変異ウイルスの「デルタ株」に対しても18歳から55歳の場合、5倍以上に、65歳から85歳の場合は、11倍以上に増えたということです。

FDAやCDC=疾病対策センターは、現在使われているワクチンの効果について「接種を完了した人はデルタ株を含めた変異ウイルスに対しても重症化や死亡から守られている。現時点で、接種を完了した人に追加の接種は必要ない」とする共同声明を発表し、今後、科学的な知見に基づいて必要性を判断するとしています。

アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士も「臓器移植やがんの化学療法を受けるなどして免疫を抑制された状態にある人は追加の接種が必要になるかもしれない」という見解を示しています。

アメリカの製薬会社モデルナは、開発した新型コロナウイルスワクチンについて、感染力が強い変異ウイルスの「デルタ株」などの拡大により今後、追加のワクチン接種が必要になるとする見解を明らかにしました。

図23:モデルナ社プレスリリース

モデルナ社プレスリリース

モデルナは5日、新型コロナウイルスワクチンの有効性や、変異ウイルスに対応した新たなワクチンの開発状況についての資料を公表しました。
それによりますと、接種から6か月後のモデルナのワクチンの発症を防ぐ有効性は93%と、高い水準が維持されていることが確認されたとしています。

一方で、感染力の強い変異ウイルスの「デルタ株」など変異したウイルスが拡大する中「今後ワクチンの有効性は低下していくだろう」として、2回の接種を終えた人にも、ことしの秋以降、3回目の接種が必要になるとする見解を明らかにしました。

  

出所:NHK 新型コロナワクチン 3回目の接種 必要?効果は?(2021年8月8日)
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210803b.html

[14]実際に3回目の追加ワクチン接種の効果は?

まず何人かの医療従事者に3回目接種したという論文では、3回目のワクチン接種2週間以降で抗体価が回復していました。

図24:2回目・3回目ワクチン接種後の、非変異型とベータ型に対する抗体価の推移

2回目・3回目ワクチン接種後の、非変異型とベータ型に対する抗体価の推移

出所:medRxiv  A third COVID-19 vaccine shot markedly boosts neutralizing antibody potency and breadth
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.08.11.21261670v1

またイスラエルの論文では、7月30日から8月31日の60歳以上で2回のワクチン接種後の1,137,804名の登録データを確認したところ、3回目非接種者は3回目の接種を受けて12日以上たった人と比較して、感染リスクは11.3倍あり、重症感染は19.5倍でした。
またその効果は3回目のワクチン接種10日以前ではそれほど認められませんでした。

図25:3回目接種者と非接種者での感染・重症化の症例数・比率

3回目接種者と非接種者での感染・重症化の症例数・比率

出所:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE  Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2114255

[15]追加の接種をめぐって

WHO(世界保健機関)は、ワクチンの接種が進んでいない途上国への供給に影響が出るとして、9月末まで行わないよう求めていて、議論になっています。

9月13日、医学雑誌「ランセット」で3回目接種ではなく、アフリカなどの未接種国での接種を優先すべきという、論文が発表されました。
「世界的な規模での一次的な予防接種を絶対的な優先事項として考える必要性がある」
「追加接種によって最終的に利益が得られたとしても、まだワクチンを打っていない人に最初の防御を提供することの利益を上回ることはないだろう。もし、ワクチンをもっとも効果的な場所に配置させられれば、変異株の更なる進化を抑制しながら、パンデミックの終焉を早めることができる」

  

出所:クーリエ・ジャポン 3回目接種に「待った!」コロナワクチン追加接種に反発する研究者たちの主張
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9b0cfe2388606ac966f00336e588abe7f9ea56e

世界的なワクチン格差が大きな問題になります。

<ご参考ください>

久留米大学医学部免疫学講座のコロナウイルス関連情報が大変充実しています。
ご覧ください。

久留米大学医学部免疫学講座ホームページ
「免疫を理解し、新型コロナウイルスを正しく恐れるために」

http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20210917.pdf
※こちらのファイルは容量が大きいためクリックする際はご注意ください。

http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html