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Vol.15(2020/11/10) 当クリニックでの抗体検査の結果/感染者の抗体保有率の低下/国・地域間での致死率の違い/飲み会での集団感染事例/ほか

新型コロナウイルス感染症の拡大が中国で始まって10ヶ月余り。各国で多くの研究・分析が進んでいます。
今号では、新型コロナウイルス感染者の症例分析や、多国間における致死率の比較に関する論文に加えて、国立感染症研究所が発表した「飲み会での集団感染事例」も取り上げています。
これまでの集団感染の事例分析の結果から、飲酒・会食の場面では何に注意すべきか、教訓が丁寧にまとめられていますので是非ご一読ください。
晩秋から冬を迎えるにつれ、感染者数の増加を伝える報道も多くなってきました。一人ひとりが感染予防策を徹底するとともに、更なる研究の成果が待たれるところです。

[1]当院採血検査での抗体保有率は

当クリニックでは発熱や咳などの症状がない(過去2週間以内にもなかった)方を対象に実施しておりますが、当クリニックでの新型コロナウイルス抗体検査(9月15日から10月14日まで)の陽性率は、1.47%(407例中6例)でした。
また、6月15日の検査開始から陽性率は、1.44%(1811例中26例)でした。ほぼ一定しています。

(図1)当クリニックでの抗体検査の推移

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[2]日本と世界:感染者数の動向

世界では相変わらず増加傾向です。日本も第3波が近づいてきている可能性があります。

(図2)新型コロナウイルス累積感染者数(世界)

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(図3)日別の新規感染者数(日本)

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出所:(図2)世界:外務省 各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html
(図3)日本:Yahoo!新型コロナウイルス感染症まとめ
https://hazard.yahoo.co.jp/article/20200207

[3]時間の経過と共に、感染者の抗体保有率が低下することを示す論文

PCR検査の結果、新型コロナウイルス感染症と診断されたニューヨーク市とデトロイト市のヘルスケアワーカーと救急スタッフを対象に、発病から2週間以降に新型コロナスパイク蛋白に対するIgG抗体を測定しました。
PCR陽性後に抗体が上昇するのは95%であり、3か月後以降は抗体保有率が低下してきていました。

(図4)抗体保有率の推移

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出所:新型コロナ既感染者におけるIgG抗体消失率
Lack of antibodies to SARS-CoV-2 in a large cohort of previously infected persons. Clin Infect Dis. 2020 Nov 4
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa1685/5956137
(図表は、論文を基に筆者作成)

[4]以前「風邪」をひいた人々は新型コロナリスクが低いようだ

さて、新型コロナウイルス感染症と、その他の一般的な風邪コロナウイルスによる病気との相関関係を調査した研究論文があります。
過去4年の間に副鼻腔炎や、気管支炎、咽頭炎などの風邪症状を経験したことがある人は、新型コロナPCR検査の陽性率が低いという研究結果になっており、患者の年齢層にも関係があるようです。

背景:

季節性コロナウイルスと新型コロナウイルスの間に交差免疫がある可能性があり、パンデミック前の血液にすでに新型コロナとの体液性及び細胞性免疫のあることが明らかにされています。

方法:

健康保険診療記録、病歴、検査データをもとに、新型コロナのPCR検査を受けた869,236名からなるコホート調査をおこないました。PCR陽性と関連すると思われる前年の様々な症状や疾患との関連を解析しました。

(図5)風邪の一般的な症状の経時的な保護効果

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上記の図は、最近の4年間に風邪症状(副鼻腔炎、気管支炎、咽頭炎)を経験した人は新型コロナPCR検査陽性率が低下していたということを示しています。
症状が重なっているほど、また最近の感染であるほどコロナ検査陽性率が低下していましたが、その度合いは5%程度まででした。

(図6)年齢層別のSARS-CoV-2のPCR検査が陽性であるオッズ比

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上記の図はこのような低下効果は30歳以上で明らかに認められ、若年者には認められなかったことを示しています。30歳から70歳では危険率(odds ratio)は約0.8程度であり、コロナ検査陽性率が20%程度低下したことを示しています。
30歳以上では過去のコロナウイルス感染による免疫記憶があり、最近の風邪による免疫系の刺激が新型コロナ感染にある程度効果があったとも考えらえます。
その前の図で5%程度しか低下していなかったことは、感染者の多くが若年者であったことに関係している可能性があります。

出所:Prior Presumed Coronavirus Infection Reduces COVID-19 Risk: A Cohort Study.
J Infect. 2020 Oct 27:S0163-4453(20)30683-6
https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(20)30683-6/fulltext

[5]シンガポールと日本の新型コロナ死亡率比較

続いては、国別の比較です。
シンガポールでは新型コロナに感染した患者の死亡率が他国と比べて極めて低いことが知られています。
60代と70代の年齢調整死亡率は、それぞれシンガポール1.84%、5.57% でしたが、日本5.52%、15.49%となっていました。
下記の図は対数グラフなので注意が必要ですが、世界的に見て死亡率の低いニュージーランド、韓国、日本と比べてもシンガポールの死亡率がいかに低いものか、よくわかります。
なお、この違いが生まれた背景に、シンガポールのPCRでの患者発見率の高さがあるのか、ウイルスの特性なのか、まだわかりません。

(図7)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の粗致死リスク(国別)

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出所:A Comparison of Case Fatality Risk of COVID-19 between Singapore and Japan.
J Clin Med. 2020 Oct 16;9(10):
https://www.mdpi.com/2077-0383/9/10/3326/htm

[6]感染者に高齢者が多いほど死亡率が上昇します:欧米での比較

日本とシンガポールの間の比較に続いては、欧米での比較です。
ヨーロッパ、アメリカ、カナダの間で比較したところ、感染者に75歳以上の高齢者が多い国ほど、致死率が高い、という結果が出ています。
(円のサイズは、100万人の住民あたりのCOVID-19関連の死亡数の国別の数を反映しています)

(図8)新型コロナウイルス感染症の致死率(CFR)と75歳以上の人の割合との関連

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出所:Older age groups and country-specific case fatality rates of COVID-19 in Europe, USA and Canada. Infection. 2020 Oct 24
https://link.springer.com/article/10.1007/s15010-020-01538-w

[7]新型コロナ重症化関連遺伝子はネアンデルタール人由来かも

新型コロナウイルス感染症の致死率に、国や地域によって大きな違いがあることが、データから示されつつありますが、その要因のひとつを遺伝子に求めた研究があります。

3199名の新型コロナ入院患者と対照者を対象としたCOVID-19 Host Genetics Initiative研究によれば、第3染色体に遺伝子クラスタが新型コロナ感染入院重症者に多いことがわかりました。
由来分析の結果、5万個の塩基を持つこのゲノムセグメントはネアンデルタール人から受け継いだものであることが判明しました。
現在、南アジアの人々の50%と、ヨーロッパの16%の人々がこれらの遺伝子を持っています。
東アジアにはほとんどないようです。

(図9)ネアンデルタール人に由来する新型コロナ重症化関連遺伝子の保有率(パイグラフ赤い部分)

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出所:The major genetic risk factor for severe COVID-19 is inherited from Neanderthals.
Nature. 2020 Sep 30.
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2818-3

[8]国立感染症研究所は10月28日、新型コロナウイルスの感染について「いわゆる『飲み会』における集団感染事例」を公表しました

いずれにしても、このウイルスを乗り越えるには普段からの感染予防を徹底するほかありません。
本日は感染予防策を考えるための材料として、国立感染症研究所がまとめた、飲み会で集団感染が発生してしまった事例6例を全て紹介します。参加人数や座席レイアウト、参加時間、換気情報など、具体的なシーンが記載されています。
ここに記載されている「教訓」は、今日から使える情報です。是非ご参考になさってください。

<調査方法>

・自治体からの支援依頼に基づき、国立感染症研究所感染症疫学センター職員および実地疫学専門家養成コース(FETP)の研修生等が2020年2月~10月15日までに調査支援を行った実地疫学調査事例のうち、いわゆる「飲み会」における集団感染事例*の振り返りを実施

・調査から得られた知見や教訓を整理

<結果>

☑ケースA:テーブル席での会食の事例

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☑ケースB:発症前の症例が参加した飲み会で、同席した全員が陽性

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☑ケースC:発症前の症例が参加した飲み会で、居合わせた複数グループの参加者計15名程度のうち半数が陽性

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☑ケースD感染源不明、同じ店舗内に居合わせた客と従業員が同時期に発症し、陽性

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☑ケースE:職場の同僚らとともに個室内にて会食した事例

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☑ケースF:複数名での飲み会の事例

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☑6事例のまとめ

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<まとめ>

・今回対象のA~Fの6事例では、同グループの客-客間の伝播事例が5例、別グループの客-客間が3例、客-従業員間の伝播事例が2例で、客-客間の伝播が多く見られた。これは一般的な会食時でも同様の傾向だった

・客-従業員間の2事例について、ケースDでは、従業員はマスク着用をしていたにもかかわらず、客(マスク着用無し)と会話を多くしていた従業員の感染が認められ、ケースFでは、客と同じテーブル等に着席し、長時間滞在・飲酒した等、客(マスク着用無し)と密接な関わりをした従業員(マスク着用状況不明)の感染が認められた
➡マスクを着用していても、十分な距離を保てない状況下でマスク着用がない客と会話等密接な関わりをした場合、完全に感染を防ぐことができない可能性

・また、一般的な会食時と同様に、いわゆる「飲み会」事例においても、近距離での接触やマスク着用無しでの会話、発症した店員の勤務継続、店内の換気不良等によって感染する可能性が高まると考えられた

・一方、いわゆる「飲み会」事例の特徴として、別グループの客-客間の伝播も見られた。別グループに感染伝播した事例では、①参加人数が多く、人が密集しやすい環境であった、②多数の人(別グループの人も含む)と接触し会話した、③席移動が頻繁に行われた、④飲み物の回し飲みがみられた、等の特徴が認められた(飲酒そのものが感染リスクを上げるわけではない)

<提言>

●一般的な感染対策であるマスク着用、手指衛生、従業員の健康管理、身体的距離の確保、店内のこまめな換気の実施等に加え、今回分かったことから以下について提言する

【客】
  • ◦体調不良者はイベント・宴会に参加しない
  • ◦感染源になるリスクを極力おさえるため、日頃から感染機会(3密)を避ける、正しいマスク着用・手指衛生を心掛ける
  • ◦回し飲み(グラス等通常飲用に用いる容器の共用)しない
  • ◦別グループへの不要な接触を避ける
【従業員】
  • ◦密集しないような店内レイアウト・座席配置の工夫(特に宴会・イベント時)
  • ◦席移動の制限を設ける

出所:いわゆる「飲み会」における集団感染事例について 国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9941-covid19-26.html
上記図表:https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/covid19-26.pdf