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Vol.14(2020/9/30) 当クリニックでの抗体検査の結果/治療薬の国内開発最新情報/インフルエンザワクチン関連情報/ほか

当クリニックで実施している抗体検査の動向を毎号お伝えしていますが、やはり、実際には無症状の感染者が多くおられることが推測されます。
有効なワクチンや治療薬の登場が期待されるなか、今号では国内の臨床試験で進展のあったアビガンの最新動向と、冬に向けたインフルエンザ対策についてお伝えしてまいります。
既に今年6月から8月に冬を迎えたオーストラリアや南米など南半球の国々におけるインフルエンザの流行傾向と、そこから我々が学べるこの冬の備えについて考えます。

[1]当クリニックでの新型コロナウイルス抗体検査の結果について

当クリニックでは発熱や咳などの症状がない(過去2週間以内にもなかった)方を対象に実施しておりますが、院内における新型コロナウイルス抗体検査(8月15日から9月14日)の陽性率は、493例中6例(1.21%)でした。また、6月15日の検査開始からの通算では、1404例中20例(1.42%)でした。
東京都の人口(推計)は約1400万人を対象に、当クリニックの抗体検査の陽性率(1.42%)を掛け合わせて算出される、東京都の推定既感染者は約20万人となります。
これまでに都が公式発表している既感染者は約2.5万人ですので、試算上の差は約8倍。ここから先は推測ですが、抗体の消えてしまった方が一定数いると考えると、実際の感染者数は、報告されている人数の約10倍程度、そのうち9割ほどは無症状感染者という可能性もあります。

[2]アビガンが有望そうです!/ 治療薬の国内開発最新情報

富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学株式会社が、今年3月末から進めていた「アビガン」の国内臨床試験で、ひとつの進展がありました。
当初の目標症例数が96例だったところを途中で引き上げ、最終的に156例を解析した結果、アビガンの投与により早期に症状が改善することが確認できた、とのことです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象とした抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)の国内臨床第Ⅲ相試験において、主要評価項目を達成しました。
本年3月、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象に「アビガン」の国内臨床第III相試験を開始。症状(体温、酸素飽和度、胸部画像)の軽快かつウイルスの陰性化までの時間を主要評価項目として、「アビガン」投与の有効性と安全性をランダム化プラセボ対照単盲検比較試験で検討しました。
156例を解析対象とした主要評価項目の中央値は、「アビガン」投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者に「アビガン」を投与することで早期に症状を改善することを、統計学的有意差(p値=0.0136)をもって確認できました。本試験では、安全性上の新たな懸念は認められませんでした。
10月中にも「アビガン」の製造販売承認事項一部変更承認申請を行う予定です。

出所:富士フイルムホールディングス株式会社ホームページ
「新型コロナウイルス感染症患者を対象とした国内臨床第III相試験にて主要評価項目を達成」
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/5451

[3]インフルエンザとインフルエンザワクチン関連情報:Q&Aと情報

さて、これからの季節は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の両方に注意を払っていく時期になりますが、Withコロナ時代のインフルエンザについて、今まで分かっていることをQ&A方式で説明していきます。

Q1今年のインフルエンザの見込みはどうでしょう?
A1ソーシャルディスタンス、マスク、手洗いなどでインフルエンザがしっかり予防されているようです。
9月までの日本のデータや南半球の感染状況からインフルエンザは非常に減っています。

情報厚労省によると、今季の全国5,000か所の医療機関からの報告数が8月31日~9月13日のインフルエンザ患者数は7人でした。昨年は沖縄で大流行していたこともあって、同時期の患者数は9,556人でした。
昨年度の0.07%という非常に少ない数字でした。
また南半球のインフルエンザは下記のグラフのように、どの国も非常に減っています。

(図1)南半球4か国でのインフルエンザ発生状況の過去5年と今年の比較

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出所:The Economist「The southern hemisphere skipped flu season in 2020」
https://www.economist.com/graphic-detail/2020/09/12/the-southern-hemisphere-skipped-flu-season-in-2020

Q2インフルエンザと新型コロナに同時にかかることはあるでしょうか?
A2上記のようにインフルエンザは少ないと考えますが、症状が区別できませんので問題になります。
過去の同時感染の報告は少ないのですが、一度どちらかにかかると別の感染症にもかかりやすくなることは確かなようです。その意味で予防が重要です。
Q3インフルエンザワクチンはいつ接種すべきでしょうか?
A3厚生労働省からの「お願い」では「65 歳以上の方や心不全・腎不全・呼吸不全のある60歳以上の方々でインフルエンザワクチンの接種を希望される方は10 月1日(木)から接種を行い、それ以外の方は、10 月26 日(月)まで接種をお待ちいただくようお願いします。」となっています。
またその啓発ポスターの最後の方には「今年は過去5年で最大量(最大約6300万人分)のワクチンを供給予定ですが、より必要とされている方に確実に届くように、ご協力をお願いします。お示しした日程はあくまで目安であり、前後があっても接種を妨げるものではありません。」とも記載されています。
今年はインフルエンザが早くまん延する可能性は低いと考えますので、時期が10月下旬以降になっても問題ないと考えますが、ご心配な方は医師にご相談ください。

情報季節性インフルエンザワクチン接種時期ご協力のお願い
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index_00011.html

Q4インフルエンザワクチンの効果はどうでしょうか?
肺炎球菌ワクチンと一緒に接種を勧めるとも聞いたことがありますが、どうでしょうか?
A4インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスに対して1回接種で約7割程度に効果があるといわれています。基礎疾患があったり社会的な必要性がある場合には2回接種することがあります。

また65 歳以上の方や心不全・腎不全・呼吸不全のある60歳以上の方々では肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されます。肺炎球菌ワクチンには5年に1回接種するニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)と1回の接種だけで良いプレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)があります。平成26年10月からの定期接種になっているのはニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)です。公的補助などに関してはお住いの市町村もしくは医師にご相談ください。

重要な情報としては、これらのワクチンを接種している人は、たぶん細胞性免疫の活性化によって新型コロナウイルスにかかりにくくなる可能性が高いということです。
その意味で条件が合えば、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種をお勧めしています。
こちらに関しても過去のワクチン接種歴をお持ちになり医師にご相談ください。

情報日経GOODAYより 抜粋引用
「インフルエンザ予防接種がコロナの重症化リスク減少に関係」
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100031/090300701/

インフルエンザワクチン予防接種と肺炎球菌ワクチン予防接種は新型コロナ感染率を減らしたようです。
Noale M, et al. Vaccines 2020, 8(3), 471. Published online August 23, 2020.
The Association between Influenza and Pneumococcal Vaccinations and SARS-Cov-2 Infection: Data from the EPICOVID19 Web-Based Survey
https://www.mdpi.com/2076-393X/8/3/471

(図2)

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新型コロナウイルスの感染リスク低下との関係が示唆された7つのワクチンがあります。
Pawlowski C, et al. medRxiv preprint. Posted July 29, 2020.
Exploratory analysis of immunization records highlights decreased SARS-CoV-2 rates in individuals with recent non-COVID-19 vaccinations
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.07.27.20161976v2

①ポリオワクチン ②Hib(インフルエンザ菌b型)ワクチン ③MMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹)ワクチン ④水痘ワクチン ⑤13価の肺炎球菌ワクチン ⑥65歳以上に対するインフルエンザワクチン ⑦A型肝炎・B型肝炎混合ワクチン

[4]新しい感染症外来についてイメージ

風邪やインフルエンザ等の患者たちで混み合う病院の待合室を避けたいと思いながら、処方薬を貰うためには仕方がない、と諦めていた方も多いかと思います。その状況に変化が起こっています。
新型コロナウイルス感染症がもたらした、良い影響として、病院での検査・診察の流れが変わりつつあります。感染症・発熱患者と、そうでない方の動線を分ける。感染症・発熱患者の方の検査は施設外で行い、診療はWebやアプリを使ったオンラインで行う。当クリニックにおいても感染リスクを低減し、皆様が安心してクリニックを受診できる環境づくりに取り組んでいます。

(図3)医療機関のニューノーマル

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[図:筆者作成]