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Vol.13(2020/9/9) 当クリニックでの抗体検査の結果、日本と世界の感染者動向/過去のパンデミックから学ぶ/最新の治療薬・治療法・ワクチン/ほか

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は、東京都においてもいまだ100名以上の規模で発生していますが、データで見ると、第二のピークを越えた感じがあります。
だからと言って、感染対策の手を緩めて良い訳はありません。100年以上前に流行したスペイン風邪(スペインインフルエンザ)に学ぶと、今秋・今冬に向けて備えが必要と考えます。
今号では、新型コロナウイルス感染症の現状を俯瞰しつつ、治療薬・治療法・ワクチン開発の現状を再確認するとともに、厚労省が推進する、かかりつけ医によるコロナ検査や、最新の検査情報についてもお伝えします。

今回のトピックス

1. 当クリニックでの新型コロナウイルス抗体検査の結果について

2. 日本の統計では第2波を過ぎた感があります

3. 世界の状況:アメリカおよび南米が中心になっています

4. 経済への影響を調べたコンサルティング会社の報告です

5. 過去のパンデミック情報(スペインインフルエンザ)から学ぶもの

6. ニューヨークタイムズ記事より、現在の治療薬・治療法の状況

7. ワクチン情報の最新動向

8. やはりBCGワクチンは効果的なようです

9. 抗体があると再感染の予防ができる場合と、予防できない場合があります

10. かかりつけ医のコロナ検査が始まります

11. クリニックでの検査方法

[1]当クリニックでの新型コロナウイルス抗体検査の結果について

当クリニックでは発熱や咳などの症状がない(過去2週間以内にもなかった)方を対象に実施しておりますが、7月15日から8月14日の間の陽性率は、506例中6例(1.18%)でした。また、6月15日の検査開始からの通算では、911例中14例(1.54%)でした。
明確な症状がない人も多く、やはり不顕性感染者は少なくない、という印象です。

[2]日本の統計では第2波を過ぎた感があります

厚労省報告によると、9月4日、各自治体が公表している感染者数(陽性者数)を集計した結果、当初からの感染総数は70,051名、死亡者1,348名となりました。
6月末頃から始まった第2波は、患者数は多かったものの、死亡者数は明らかに減っています。

(図1)日別の新規感染者数(9月8日時点)

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出所:ニュースダイジェスト:新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ
https://newsdigest.jp/pages/coronavirus/

(図2)日別の新規死亡者数(9月7日時点)

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出所:ニュースダイジェスト:新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ
https://newsdigest.jp/pages/coronavirus/

[3]世界の状況:アメリカおよび南米が中心になっています

新規の死者数は、ブラジル、中南米、米国、インドに多く、EUや英国は明らかに減っています。全体の死者数はまだまだ減る傾向にありません。

(図3)世界の日別死亡者数推移

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国別の新規死亡者数のグラフですが、日本はずっと低く、英国の死亡者数の激減が良くわかります。
しかしながら東アジアに焦点をあてると日本は中国、シンガポール、韓国に比べると死者数は少なくありません。

(図4)国別の新規死亡者数(米国、ブラジル、英国、日本の比較)

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(図5)国別の新規死亡者数(日本、中国、韓国、シンガポールの比較)

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例年と比べた超過死亡者数は、ヨーロッパ、米国、南米に多く、日本を含めてアジア地域では増加していません。

(図6)国別の超過死亡者数

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本節全てのグラフの出所:Financial times「Coronavirus tracked: the latest figures as countries fight Covid-19 resurgence」
https://www.ft.com/content/a2901ce8-5eb7-4633-b89c-cbdf5b386938

[4]経済への影響を調べたコンサルティング会社の報告です

コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー社が、COVID-19が経済や消費者心理へ与えた影響について纏めた調査結果をご紹介します。
7月までのデータですが、中国、インド、米国などは今後の経済に対して楽観的な人が多く(グラフ上方)、日本は中でも一番悲観的傾向(グラフの一番下)が強いとのことでした。
ただ日を追ってみると7月になって悲観的傾向がやや減ってきています。
第2波がおさまってきて、またこの傾向は変わるかもしれません。

(図7)国別の消費者感情の推移

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出所:McKinsey&Company:Consumer sentiment and behavior continue to reflect the uncertainty of the COVID-19 crisis
https://www.mckinsey.com/business-functions/marketing-and-sales/our-insights/a-global-view-of-how-consumer-behavior-is-changing-amid-covid-19

[5]過去のパンデミック情報(スペインインフルエンザ)から学ぶもの

20世紀初めに世界的に大流行を見せた、スペインインフルエンザ(スペイン風邪、とも言われます)の経過を振り返ると、今年の秋・冬の対策が重要だとわかります。

◆スペインインフルエンザとは

スペインインフルエンザは、1918年3月頃から1920年頃まで全世界で流行した、科学的に検証可能なインフルエンザパンデミックの中では史上最大のものです。
統計は諸説ありますが、この間、当時の世界人口18億~20億人の1/3以上が感染し、数千万人(概ね2千万人~5千万人といわれます)が死亡し、その致死率(発病者数に対する死亡者数の割合)は2.5%以上と推計されています。
この流行は第一次世界大戦の最中に起こりましたので、参戦していた国々の兵士にも甚大な被害をもたらし、戦局にも大きな影響を与えました。
各国はインフルエンザによる戦力の低下を敵国に悟られないようその流行を秘匿しましたが、参戦していなかったスペインでは情報統制が敷かれておらず同国内の流行が広く世界に報道されました。
スペイン国王や大臣もインフルエンザにかかったという情報が報じられたことなどから、このパンデミックはあたかもスペイン発であるかのように受け取られ、同国の名が付いたとされています。

◆スペインインフルエンザはどこで発生したか

スペインインフルエンザにつながる最初の流行としてはっきりした記録があるのは1918年3月の米国であり、ここから流行が始まったとする見方が一般的です。
しかし、記録があることと真の発生地は同じとは限りません。
特に中国は、アジアインフルエンザや香港インフルエンザが発生し、また鳥インフルエンザA(H5N1)やA(H7N9)ウイルスのヒト感染が最初に報告された国でもあることから、スペインインフルエンザも中国で発生したのではないかとする見解があります。
その他、ヨーロッパ(フランスなど)やアフリカ起源とする説もあります。

◆スペインインフルエンザの病原体

スペインインフルエンザの原因ウイルスはA(H1N1)という亜型のインフルエンザウイルスであることがわかっています。
このウイルスは、人と鳥とのウイルス遺伝子が再集合してできたと考えられ、1918年の時点では「新型インフルエンザ」と呼べるものでした。

◆米国のスペインインフルエンザ

この1918年の春に見られた流行をスペインインフルエンザの第1波(春の流行、Spring wave)といいます。
第1波は、感染者数は多かったものの、致死率はそれほど高くありませんでした。
この第1波は同年夏頃に一旦勢いが低下しました。

1918年9月頃からの流行を第2波、1919年初頭以降の流行を第3波といいます。
特に第2波においては肺炎を合併して重症化する患者や死亡者が多かったことが知られています。

工場労働者の多量欠勤により産業機能が低下、病院の医師・看護師、電信電話会社員、警察官、鉄道員、ごみ収集者、遺体埋葬業者も多数インフルエンザに罹患し、公共サービスが著しく低下したといいます。
一部の家庭では、労働や家事をする体力が残っている大人が誰もおらず、収入も食料も途絶えて家族全員が家から出られなくなり、ボランティアが炊き出しをして食事を届けて回ったといいます。

第1波に比べて第2波で致死率が高くなった理由はよくわかっていません。
ウイルスが人に対し高病原性に変異した可能性や、第2波が本来インフルエンザの流行する寒い時期と重なったことなど、様々な可能性が指摘されています。

スペインインフルエンザ流行期間中の米国の被害については多くの統計がありますが、1918年~1919年に全人口の1/4以上すなわち2,500万人以上がインフルエンザにかかり、67万5千人が死亡した(うち「超過死亡」すなわちパンデミックにより例年より多く死亡した人数は44万人)とする記載があります。

その後、米国のスペインインフルエンザの勢いは徐々に衰え、住民の大部分が免疫を獲得するとともに病原性も低下して季節性インフルエンザに移行していきました。

◆わが国のスペインインフルエンザ

わが国でも1918年(大正7年)8月下旬からスペインインフルエンザの流行が始まり、11月には全国的な大流行となりました。
嵐のような第1回流行も12月頃には勢いが低下しました。
当時の内務省衛生局は、日本国内の総人口5,719万人に対し、第1回流行期間中の総患者数は2,116万8千人と報告しています。
すなわち国民の約37%がこの期間にインフルエンザにかかったことになります。
このうち、総死亡者数は25万7千人とされていますので、単純に計算すると致死率は1.2%になります。

その後、第2回流行(1919年9月~1920年7月)では総患者数241万2千人、総死亡者数12万8千人(致死率5.3%)、第3回流行(1920年8月~1921年7月)では総患者数22万4千人、総死亡者数3,698人(致死率1.6%)と記録されています。
第3回目は、総患者数からみてもすでに季節性インフルエンザに移行していると見たほうが良いかも知れません。

(図8)日本のスペインインフルエンザ 時間経過と患者数および致死率の推移

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◆軍艦「矢矧(やはぎ)」事件

矢矧は呉を母港とする軽巡洋艦で、計469人を載せて航行中、1918年11月に立ち寄ったシンガポールで、一時上陸した乗組員によりインフルエンザウイルスが持ち込まれてしまいます。
閉鎖空間である艦内でインフルエンザが爆発的に流行し、看護手、軍医も倒れ、最終的に306人(65%)が発症、うち48人が死亡(致死率16%)したというものです。
一方、シンガポールから乗り込んだ便乗者の中にはスペインインフルエンザに1度かかって回復した者もおり、彼らは艦内では発病しませんでした。
1度かかると免疫ができ、2度かからないこともこの事件は教えています。

◆当時の感染症対策について

1918年当時ウイルスは発見されていませんでしたが、気道を侵す病原体が咳やクシャミの際に放出され感染源になると考えられていました。
様々な感染対策が行われたことが記録されています。
例えば米国の一部の行政当局は、市民に対し人前で咳やクシャミを控え、マスクを着用することを推奨しました。
また、学校、教会、劇場その他の大衆娯楽施設の閉鎖命令を出した記録もあります。
学校閉鎖など公衆衛生学的な対策を積極的に導入したセントルイス市では感染拡大防止に成功しましたが、そのような対策をとらなかったフィラデルフィアでは感染が拡大したとする記録も残されており、公衆衛生学的な介入の重要性を考える上でこの例は今でもよく引用されます。

わが国でも内務省衛生局が1919年1月に「流行性(はやり)感冒(かぜ)予防(よぼう)心得(こころえ)」を公開しています。
それを見ると、「咳やクシャミをすると目に見えない程微細な泡沫が周りに吹き飛ばされ、それを吸い込むとこの病気にかかる」ので「病人、咳をする者には近寄らない」、「沢山人の集まっている所(芝居、活動写真、電車など)に立ち入らない」、「咳やクシャミをする時はハンケチ、手ぬぐいなどで鼻、口を覆う」ことが重要であると書かれています。
また、インフルエンザにかかった場合は「すぐに休む」こと、「病人の部屋はなるべく別にし、病室に入る時はマスクを付ける」ことが勧められています(一部現代語に訳)。
これは現在「咳エチケット」として推奨されていることとほとんど同じ内容で、現代のインフルエンザ対策と同じことが100年前に推奨されていたことに驚きます。

当時の感染対策では手指衛生(手洗い)にほとんど言及されていない点が気になります。
流水と石鹸、刷り込み式アルコール消毒薬などに関して、当時はそのようなのもが十分な環境ではなかったのです。

出所:内閣府・過去のパンデミックレビュー:2018年12月17,25日 防衛医科大学校 川名明彦教授の記事
https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_01.html

論文にもありますが、100年前に推奨されていたインフルエンザ対策は、現在の新型コロナウイルス感染症対策に通じるものがあります。手洗い、咳エチケット、三密を避ける等の基本行動を継続し、次の波にも備えていきたいものです。

[6]ニューヨークタイムズ記事より、現在の治療薬・治療法の状況

日本では第二波を超えつつあるとはいえ、世界的にはいまだ流行期にあり、過去を例にとると今秋・今冬に向けての備えを必要という状況の中で、現在、治療薬・治療法はどこまで研究が進んでいるのか。
ニューヨークタイムズが纏めている記事を参照します。

(図9)新型コロナウイルス感染症の治療薬・治療法(21種類のまとめ)

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出所:The NewYork Times:Coronavirus Drug and Treatment Tracker
https://www.nytimes.com/interactive/2020/science/coronavirus-drugs-treatments.html

  • 1.広く使用されているもの(Widely used):人工呼吸などが取り上げられています。
  • 2.有望(Promising evidence):レムデシベル(Remdesivir)、コルチコステロイドです。ともに重症患者に対する治療薬です。
  • 3.可能性あるものの評価未定(tentative or mixed evidence):アビガン(Favipiravir)、MK-4482、合成ACE2、イベルメクチン(Ivermectin)、オレアンドリン(Oleandrin)、既感染患者の回復期血清、モノクローナル抗体(米イーライリリー)、インターフェロン、サイトカインインヒビター、血液透析(サイトカイン除去)、抗凝固療法です。
  • 4.可能性なし(Not promising):HIV治療薬(Lopinavir and ritonavir)、クロロキン
  • 5.偽情報でありやってはいけないこと(do not do this):漂白剤や消毒剤を飲むこと、紫外線をあびること、積極的に銀を含むローションや石鹸を使用することです。
◆もしかしたら高コレステロール血症の代表的治療薬のスタチンが効くかもしれないという報告もありました。

要約すると、スタチンには:

  • ①新型コロナウイルスが細胞に入り込むためのACE2受容体、CD147受容体、脂質ラフト構造(細菌やウイルスの侵入口の一つ)を変化させて侵入を防ぐ作用がある
  • ②オートファジー(自己のタンパク質を分解する作用)を活発にして、ウイルスの増殖や劣化を調節する
  • ③抗炎症作用
  • ④凝固反応活性化を抑制する働き

があるのだそうです。

出所:Statins: Could an old friend help the fight against COVID-19? J Pharmacol.2020;10.1111/bph.15166.
doi:10.1111/bph.15166
https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bph.15166

こうした検証は世界中で進められており、更なる研究成果が待たれるところです。

[7]ワクチン情報の最新動向

治療薬・治療法につづき、ワクチンについても紹介します。

(図10)新型コロナウイルス感染症のワクチン

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出所:The NewYork Times:Coronavirus Drug and Treatment Tracker
https://www.nytimes.com/interactive/2020/science/coronavirus-vaccine-tracker.html

限定使用(LIMITED)は、

  • 1.中国 CanSino Biologics: 中国軍での使用と、サウジアラビアおよびパキスタンの第3相試験です。
  • 2.ロシアGamaleya Research Institute : Sputnik Vという名前で大統領は一度使用許可を出しましたが第3相からやはり施行するそうです。
  • 3.中国 Sinovac :ブラジルとインドネシアでの第3相試験があり、限定緊急使用を許可されました。

第3相試験(PHASE3)は、
Moderna(メッセンジャーRNAワクチン)、ファイザーなど(メッセンジャーRNAワクチン)、アストラゼネカ、中国 Sinopharm、BCGワクチンです。
来月になるとまた状況が進んでいる可能性があります。

[8]やはりBCGワクチンは効果的なようです

図10にあるように、高齢者にBCGワクチンを使用して乱雑化試験を行いました。
BCG投与群では明らかに新規の呼吸器感染・ウイルス性呼吸器感染が減りました。副作用は無かったそうです。
しかしながら日本のBCG株は優秀であり、日本で高齢者に対して再投与が必要かどうかは、現時点で断言できる材料は揃っておらず不明です。

(図11)高齢者に対するBCGワクチンの感染症予防効果のまとめ

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出所:Cell:ACTIVATE: RANDOMIZED CLINICAL TRIAL OF BCG VACCINATION AGAINST INFECTION IN THE ELDERLY August 31, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.051
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31139-9

[9]抗体があると再感染の予防ができる場合と、予防できない場合があります

スペイン風邪の軍艦「矢矧(やはぎ)」事件の際に、シンガポールから乗船した一度感染したことがある人が2度目の感染は無かったということがありましたが、今回のコロナ感染でもおこりました。

漁船団で出漁した122名のうち85%がCOVID-19感染しましたが、既感染で抗体を持っていた人は感染しなかったそうです。中和抗体が確認され、再感染防止に有効だったと考えられました。

また別に、香港で世界初めてコロナ再感染を確認したというニュースもありました。
CNNニュース(2020年8月25日) https://www.cnn.co.jp/world/35158595.html

香港在住の33歳男性は3月26日、新型ウイルス感染の検査で陽性反応を示し、この時はせきとのどの痛み、発熱、頭痛の症状が3日間続いたが、その後回復していました。
ところが8月15日に渡航先のスペインから英国経由で帰還した際、空港での入境PCR検査で再び陽性の判定が出ました。
男性は病院に収容されましたが症状は認められなかったそうです。
2回の感染のウイルスの遺伝子を解析したところ、1つ目は米国や英国由来、2つ目はスイスと英国由来の別の株に近いことが判明したとのことでした。

1年に2回インフルエンザにかかる人もあり、コロナウイルスも変異して別の株になった場合には、その人の免疫反応によっては再感染がありうるということです。
コロナウイルスワクチンも複数のものを接種したり、時期によってワクチン株を変えてゆく必要があると考えられます。

[10]かかりつけ医のコロナ検査が始まります

治療薬・治療法の研究や、ワクチンの開発が進んではいるものの、まだ広く実用化までには時間を要する中で、厚労省は、感染が疑われる方への医療体制の強化に乗り出しています。今秋・今冬への備えとして、皆さまのお住まいの地域の状況を、ご自身で是非ご確認されてください。

厚生労働省は4日、新型コロナウイルスに感染したと疑われる人が受診する際の相談先について、10月以降はかかりつけ医など身近な医療機関が担うという新たな医療体制を公表した。
インフルエンザとの同時流行に備えた外来や検査の体制強化の一環で、発熱患者らが地域の医療機関で迅速に検査を受けられるようにする。同日、都道府県などに体制整備を求める文書を通知した。

これまで、主な相談先となっていた、保健所などに設置された帰国者・接触者相談センターは、機能を基本的に縮小し、「受診・相談センター(仮称)」として主に医療機関の案内を担う。
第1波では保健所で目詰まりが起き、検査にたどりつけない患者が出た反省を踏まえ、保健所の負担を軽減する狙いもある。

新体制では、検査ができる診療所などを「診療・検査医療機関(仮称)」として自治体が指定する。感染が疑われる人は、身近な医療機関に電話で相談するのが基本となる。相談先が検査可能な場合、そのまま予約して検査を受ける。

相談先が検査を行っていない場合は、検査可能な医療機関を案内してもらう。地域の医療機関は、検査できる医療機関の場所や開所時間を把握しておく。地域によっては、検査できる医療機関名を自治体のホームページで見られるようになる。地域の医師会などが設ける地域外来・検査センターでも引き続き検査を受けられる。

出所:コロナ疑い、来月から相談先は「かかりつけ医」...保健所の負担軽減:2020/09/04 読売ニュース
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20200904-OYT1T50312/

[11]クリニックでの検査方法

PCR検査は標準検査ですが、一般的に結果が出るまでに1日以上かかっており、その間の対応が決まらないことが医療や経済の停滞を招いている可能性があります。
今後のコロナ検査は2-3時間以内に判明して、その後にすぐに対応を決められることが重要です。
そのためのウイルス存在を確認できる検査として、簡易抗原検査キットとLAMP法などの迅速PCR型検査があります。
これらの検査はウイルスRNA量が50-100コピーあれば検出可能と考えられています。PCR検査と比べると感度はやや低下しますが、実際に感染力があるかどうか判定するには現実的に問題ないと考えます。

下記のように抗原検査キットとLAMP法などの迅速PCR型検査は厚労省から認められています。

厚労省より「無症状者の唾液を用いたPCR検査等について」の発表
(2020年7月17日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12488.html

  • ・唾液を用いたPCR検査と、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査を比較し、高い陽性者一致率、陰性者一致率でした。
  • ・両方の検査法で、お互いに偽陰性となる場合がありましたが、非常にウイルス量が少ない場合でした。
  • ・無症状者に対して唾液を用いたPCR検査・LAMP法検査・抗原定量検査を活用することを可能とします。

また、厚労省は無症状の人の自宅待機解除基準を「発症から10日間経過し、かつ熱が下がるなど症状が軽快してから72時間過ぎればPCR検査なしで問題なし」としました。

ここでウイルスRNA量に関するデータを挙げると下記のように発症10日目でもほとんどは400コピー以上あります。この時にはPCR検査でも抗原検査キットやLAMP法などの迅速PCR型検査でも陽性になります。

逆に、自宅待機解除基準(発症から10日間経過)で検査結果が「陰性」なら、やはり「問題なし」と判定しても良いと考えられるでしょう。

抗体検査も追加すると、過去感染に関してより情報が得られるので推奨します。

(図12)発症日別のウイルス量を踏まえた抗原検査の使用方法の研究より

20200907_01_12.jpg
簡易抗原検査:富士レビオ

https://www.fujirebio.co.jp/products/espline/sars-cov-2/index.html

20200908_01_13.jpg↑クリックで拡大

LAMP法(栄研、キヤノン)

http://loopamp.eiken.co.jp/products/sars-cov-2/index.html
https://jp.medical.canon/products/dnachip/coronavirus

それ以外にも新規のRNA検査が報告されています

SATIC法(塩野義)

https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/news/pdf/2020/06/200622_.pdf