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Vol.4(2020/4/27)世界の状況/こころの対策/アビガン/ほか

東京都に緊急事態宣言が出されてから間もなく3週間。現在の宣言は5月6日が期限とされていますが、先の見えにくい状況に、自粛疲れを感じる皆様も多いかと思います。

ノーベル賞を受賞された山中伸弥教授は、こう仰っています。

新型コロナウイルスとの闘いは長いマラソンです。都市部で市中感染が広がり、しばらくはコロナニュース走に近い努力が必要です。また、その後の持久走への準備も大切です。感染が拡大していない地域も、先手の対策が重要です。私たちが一致団結して正しい行動を粘り強く続ければ、ウイルスは力を失います。自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守りましょう!

出所:山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
https://www.covid19-yamanaka.com/index.html

まずは、今の状況について触れた後、こころの健康維持のコツをご紹介します。最後に、現在注目を集めている治療薬「アビガン」について取り上げます。

[1] 新型コロナとの闘い:全力疾走期の見込み

(図1)

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出所:FinacialTimes 「Coronavirus tracked: the latest figures as the pandemic spreads」
https://www.ft.com/coronavirus-latest

図1はFinancial timesからの引用で、毎日の死亡者数の推移(4/25時点)です。中国のような強力なロックダウンを行うと30日目をピークに減少することが期待されます。日本はまだまだ先です。 日本の研究者がそれに説明をつけています(図2)。

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↑クリックで拡大

※元のグラフは随時更新されています(直近のものは以下にあります)
https://twitter.com/ZF_phantom/status/1252814002423398400/photo/2

日本では毎日の死亡者数の報道量は少ないですが、傾向としては増加傾向にあります。
「マラソン」ではありながら、自分や家族、たいせつな人を守るための行動には、今なお「全力」で取り組む必要があり、その結果が出てくるまで(早くても20日後まで)その行動を続ける必要がある。データからは、そう読み取れるように思われます。

[2] 新型コロナウイルス、こころの対策

日本うつ病学会は4月7日に国際双極性障害学会などが出したステートメントを和訳し発表しました。

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行のような生活を激変させる出来事に直面すると、私たちの体内時計は乱れやすくなるだけでなく、一度乱れたその体内時計を適切なリズムに戻すことも難しくなることがわかっています。特に、仕事や子育て、人との関わりといった、一定のリズムで毎日決まって行ってきた社会的活動(日課)が失われると、体内時計が変調をきたし、正しく作動しなくなってしまいます。結果として、不眠や食欲低下、元気がなくなったり、つらい気分に陥ったりといった、時差ぼけに似たような不快な心身の症状が生じてきます。

反対に、毎日を規則正しく過ごすように気をつけることは、ストレス下であっても体内時計を正確に働かせ、気分を安定させるためにとても役立ちます。

たとえ新型コロナウイルス感染症の世界的大流行のように、生活が混乱している最中であっても、体内時計が正確に働くように努めることで、つらい気分をやわらげることができます。ここでは、どんなに非日常な出来事であふれていたとしても、医学的根拠に基づいた規則的な日常生活を送るために役立つ、誰でもすぐはじめられる簡単なポイントをいくつかご紹介します。

日常生活を規則的に送るための自己管理術

・自宅待機や在宅勤務であっても、自分自身で毎日決まって行う日課を設定しましょう。そうすることで、あなたの体内時計は安定して働くようになります。

・毎日、同じ時刻に起きましょう。決まった時刻に起床することは、体内時計が安定して働くために最も大切です。

・毎日、一定時間を屋外で過ごすようにしましょう(訳注: 密閉・密集・密接の3密の状況を避け、一人でいられる場所で)。体内時計の時刻合わせには、朝の光が欠かせません。朝といっても、お昼近くよりは、午前中の早い時間帯が望ましいでしょう。

・もし、あなたが外に出られないとしても、少なくとも2時間は窓際で過ごし、日の光を浴びながら、心の落ち着ける時間を持ちましょう。

・在宅での仕事や学習、友人との電話、料理など、毎日行ういくつかの活動はやる時間を決めましょう。そして、毎日、同じ時間に行いましょう。

・毎日、運動をしましょう。できれば、毎日、同じ時間帯で。

・毎日、同じ時間に食事をしましょう。食事の時間になっても、食べたくない時もあるかもしれませんが、それでも時間が来たら少量でも良いので何かを口にしましょう。

・人との交流は、たとえ社会的距離確保の期間中であっても大切です。リアルタイムに考えや気持ちを分かち合えるような人はいるでしょうか? テレビ電話か音声通話かはどちらでも結構ですので、可能そうな方とコミュニケーションの機会を持つようにしましょう。すぐに相手が思いつかなくとも、誰かいなかったかを思い出してみましょう。LINE のような文章だけの会話であっても、リアルタイムにメッセージが行き交うものであれば大丈夫です。そして、毎日、同じ時刻にそういった相手とコミュニケーションするスケジュールを持ちましょう。

・日中の昼寝(特に、午後遅くの昼寝は)は避けましょう。もし、どうしても昼寝が必要な方は最大でも30 分以内に抑えましょう。昼寝は、夜の深い睡眠を妨げます。

・夜間に明るい光(特にブルーライト)を浴びるのは避けましょう。コンピューターやスマートフォンのディスプレイも含まれます。ブルーライトは、睡眠に不可欠なホルモンを減らしてしまうことがわかっているからです。

・自分自身に合った、起床と就寝の時間を決め、一貫してその睡眠リズムを保つようにしましょう。もし、あなたが夜型ならば、たとえ家族の人より少し遅く寝て、少し早く起きることになったとしても大丈夫です。毎日、同じ時間に床につき、同じ時間に起きることがポイントです。

出所:「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ :先の見えない中であっても、日常の生活リズムには気をつけよ う」
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/2020-04-07-covid-19.pdf

簡単に言えば、こころの健康を保つために、毎日決まった行動を、毎日決まった時間に行うことが重要で、その時間の使い方、タイミングにも秘訣がある――ということでしょうか。毎日の生活のなかで、出来るところから一つでも取り組んでみては如何でしょうか。

[3]アビガンについて

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」が注目を集めています。

アビガンは旧富山化学が1990年代後半から抗インフルエンザ薬として開発してきた薬剤です。抗インフルエンザ薬「タミフル」が細胞内で増殖したウイルスを外へ出なくさせる作用を持つのに対して、アビガンは「RNAポリメラーゼ」という酵素を阻害することでウイルスの増殖そのものを防ぐという新しい作用を持ちます。

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画像:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041302100024.html

しかしながら開発研究は遅れ2004年の鳥インフルエンザに効果を持つことから再度見直されたものの、妊婦のお腹の中にいる胎児に障害が出る催奇形性の可能性があったため、また遅れ2014年にようやく認可されました。

当初は通常の季節性インフルエンザに使用できる薬剤をめざしていましたが、結局は新型インフルエンザにのみ使用が認められ、通常のインフルエンザに使われないよう徹底した管理とパンデミックに備えて200万人を目標に備蓄されることになりました。

このように時間がかかったので、実際に使用される前に特許がきれて中国でも後発品が生産されるようになりました。

アビガンは上記のように未使用薬でしたが、2013年末に西アフリカで起きた治療困難なRNAウイルス疾患である「エボラ出血熱」のアウトブレイク(突発的発生)に効果があったことから、RNAウイルスに対する広範な効果が期待されるようになりました。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)もRNAウイルスであり、武漢市の武漢大学中南病院で「アビガン(中国では後発品のファビピラビル)」を投与した患者(116人)では回復率は71.4%に認められました。

開発者の富山大学の白木公康名誉教授(千里金蘭大学副学長)は、中国の論文報告などをもとに、「発症6日までにアビガンを開始すれば、ウイルスの早期消失、咳嗽(せき)の軽減、肺炎の進行や重症化が阻止され、死亡率は激減するはずだ。ウイルス量がピークを過ぎるころから治療を始めても大きな効果は期待できない」

「外来の時点で、胸部CTで肺炎を確認して、アビガンを使用して(肺炎の進行を)止めるべきではないか」

「アビガンの早期使用は死亡率を下げる効果だけでなく、若い患者が、間質性肺炎による肺の線維化(スポンジのようになり機能しなくなること)や瘢痕化(炎症によって傷跡が残ること)などの後遺症を残さないことにも意味がある」「高齢者が急激な悪化を防ぐためにもアビガンは有用」と述べておられます。 しかしながら催奇形性の影響を受けやすい世代には、事前に説明して承諾を得なければなりません。男性に投与した場合でも精液へ移行することがわかっています。

アビガン開発メーカーが現在6月末迄の予定で進めている、その治験結果が注目されるところです。